高校野球

センバツ史上初の中止に関係者も無念の声。主催者は「出場回数にはカウントします」と球児にエール

松倉雄太

2020.03.11

92回の歴史を数えるセンバツ大会が中止に。しかし球児や学校の名前はその名に刻まれることとなった。写真:朝日新聞社

「本日、さまざまな角度から慎重に協議した結果、今大会は中止せざるを得ないとの結論にいたりました」

 世間の注目を集めた第92回選抜高校野球大会の臨時運営委員会の記者会見。大会会長の丸山昌宏・毎日新聞社長、日本高等学校野球連盟(日本高野連)の八田英二会長、齊藤善也・毎日新聞大阪本社代表は無念の表情を浮かべていた。

 太平洋戦争の影響で1942~46年には開催自体が中断されたが、予定されていた大会が中止となるのは92回の開催の中で初のこと。阪神・淡路大震災と東日本大震災の年も乗り越えてきた歴史ある大会で、大きな決断が下されることになった。

 新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るう中、3月4日には、出場校へ無観客試合での実施での準備を要請していた。出場校はその知らせを受けて、19日の開幕へ向けて準備を始めた。しかし1週間が経ってもなお国内の状況は悪化するばかり。出場選手の健康と安全対策、国内の感染状況、出場校の状況の3つの観点で不安が残った。
 
 中でも選手の健康と安全対策には、常にアンテナを張っていた。9日に行われたNPBとJリーグが主催して感染症予防などの専門家を招いた「新型コロナウイルス対策連絡会議」に、日本高野連関係者もオブザーバーとして出席している。

「選手も含めてそのご家族、周辺も気をつけておかなくてならないという先生方の見解でした。その後に我々の取り組みをご覧いただいて、アドバイスを頂戴しました。しかし、いろいろな点が不十分であるとことで、修正をしていかないといけなかった」と、日本高野連の小倉好正事務局長は話す。

 それを受けて運営委員会では、「それ以外にも主催者が手分けして専門家の皆さんに意見を伺い、参考にしました。政府の方針は頭に入っていたが、政府の専門家委員会の最初の1~2週間が正念場ということでしたが、先が読めない。まだ見通しが立っていないというのも大きな判断材料になった」と丸山大会会長は話した。

 大会として感染予防対策の概要をまとめたものの、不安を拭い去ることはできなかった。2度の震災後とは違い、「今回は、やればやるだけ不安になる」(3月4日・日本高野連の田名部和裕理事)。目に見えない敵に対して、主催者は不眠不休の体制で八方手を尽くしたが、一縷の望みが断たれた形だ。
 
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プレーはかなわずも、「出場」した歴史には名を残す