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【MLB今日は何の日】「宇野のヘディング」を超える史上最高の珍プレー! カンセコの頭を直撃した打球がホームランに!

出野哲也

2020.05.26

88年に史上初の40本塁打&40盗塁を達成するなど球界屈指のスーパースターだったカンセコだが、珍プレーでも歴史に名を残すことになった。(C)Getty Images

 宇野勝の"ヘディング事件"と言えば、日本プロ野球史上屈指の珍プレーだが、メジャーでも同じような、いやそれ以上の珍プレーがあったことを知っている人はどれくらいいるだろう? こちらはただのヘディングではなく、外野フェンスを越えてホームランになってしまったのだからスケールがでかい。

 事件が起こったのは1993年5月26日、クリーブランドでのインディアンス対テキサス・レンジャーズ戦だった。1-3でインディアンスが2点を追っていた4回裏、先頭打者のカルロス・マルティネスがライト後方へフライを放ち、右翼手のホゼ・カンセコがフェンス際で捕球体勢に入った、かに見えた。

 ところが打球はグラブをすり抜け、カンセコの頭部を直撃。大きく跳ね上がり、そのままスタンドインしてホームランになった。中堅手のデビッド・ハルスが大笑いしている横で、当のカンセコは苦笑い。「頭じゃなくてグラブに当たったんだ」と強弁したけれども、誰が見ても見事に頭に命中していた。
 
 この「オウンゴール」をきっかけに逆転されたレンジャーズは6-7で敗戦。文字通り勝負を分けたプレーになった。通算462本塁打を放ったカンセコだが「これこそ彼の一番有名なホームラン」(『FOXスポーツ』)との意見に反論するのは難しいだろう。

「1ヵ月くらいESPNでネタにされるだろうな」とカンセコはぼやいたが、その見通しは甘すぎた。「史上最高の珍プレー」として、その後テレビで繰り返し流されただけでなく、今もYouTubeで60万回以上再生されている。ヘディングの瞬間をイラスト化したベースボール・カードも作られ、2012年には当日の試合のキャップに1万1950ドルの値がついた。

 しかも、このヘディング事件には後日談がある。3日後のボストン・レッドソックス戦で、以前からマウンドに上がるのが夢だったカンセコは志願して登板。ところがこの試合でヒジを痛め、トミー・ジョン手術を受けて残りシーズンを棒に振ってしまった。

 現役晩年のステロイド騒動のおかげですっかりダーティーなイメージがついてしまったカンセコだが、どこか憎めないキャラクターの愛すべきスターだったことも忘れないでいたい。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――"裏歴史の主人公たち"」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

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