プロ野球

“打てる捕手”の新時代を切り拓け!開幕スタメン濃厚な2人の新人、郡司裕也と佐藤都志也への大きな期待

西尾典文

2020.06.10

開幕スタメンへアピールを続ける郡司(左)と佐藤(右)。彼らを近くで見てきた西尾氏が、その魅力を語る。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 いよいよ6月19日に幕を開ける今年のプロ野球。ここに来て、開幕スタメンも噂されている注目の新人が2人いる。ともに大学上がりの大型キャッチャー、郡司裕也(中日)と佐藤都志也(ロッテ)だ。アマチュア時代から彼らの活躍をその目で見てきたことで分かる、その凄さと現在の課題を今回は分析していきたいと思う。

 郡司は、仙台育英高で佐藤世那(元オリックス)、平沢大河(ロッテ)とともに中心選手として活躍し、2年秋には明治神宮大会優勝、3年夏には甲子園準優勝を果たした。慶応大でも1年秋からレギュラーとなり、3度のベストナインに輝いている。圧巻だったのは大学4年秋だ。三冠王を獲得したことはもちろんだが、11試合の49打席で選んだ四死球は16を数え、出塁率は驚異の.592(!)。3年秋、4年春も打率は3割に届かなかったが、いずれも出塁率は4割を超えている。

 厳しいマークにあいながらボールをしっかりと見極め、数少ない甘いボールをとらえていたことの証左と言えるだろう。そのバッティングはタイミングをとる動きに無駄がなく、リストの強さがありながらも、それに頼り過ぎずにバランス良く広角に打てるのが大きな持ち味となっている。
 
 郡司について一つ忘れられないエピソードがある。ちょうど東京六大学で台頭し始めた頃、広島の苑田聡彦スカウト統括部長と席を並べて観戦する機会があった。この日も攻守に活躍を見せていた郡司のプレーを見て、苑田部長は「高校時代にプロ志望届出しとったら、うちは指名してましたよ」と話してくれたのだ。チーム事情もあって、中日が昨年のドラフト4位で指名することとなったが、現役で最古参の名スカウトが高校時代から高い評価をしていたことが、そのポテンシャルをよく物語っていると言えるだろう。

 課題を挙げるとすると、プロのレベルではスローイングの速さが物足りず、捕球、送球ともに時折、雑になるのが気になるところだ。レベルの高いランナー相手には、最初は苦労することが考えられる。しかし投手の良さを引き出すリードは見事で、その裏には、郡司が勝ってきた経験があるからだろう。中日の新人キャッチャーで開幕スタメンとなったのは1937年まで遡る。OP戦や練習試合の活躍、起用を見ても、彼が球団83年ぶりの快挙を打ち立てても不思議はない。
 
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NPBの歴史を見ても“打てる捕手”がいるチームは強い