プロ野球

【12球団“縁の下の力持ち”:巨人】コロナ支援の中心にいた炭谷銀仁朗は、若手の成長を誰よりも喜ぶ男

真鍋杏奈

2020.06.14

選手会会長も務める炭谷は、新チームに馴染むために積極的にコミュニケーションをとった。写真:滝川敏之

 チームを支えるのは、何もスター選手だけではない。絶対的なレギュラーでなくとも、率先してベンチを盛り上げたり、どんな役割もこなす選手もまた、必要不可欠な存在だ。19日に開幕するプロ野球。異例のシーズンだからこそ、より輝きを増しそうな「縁の下の力持ち」を紹介しよう。

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 来る19日、プロ野球は史上最も遅い開幕を迎える。当初の予定から3ヵ月の遅れとなったものの、スポーツ界の先陣を切る形となった。その間、各球団が「開幕」という目標がない間も、個人で自主練習を工夫して行うなど調整を続け、また様々な形で支援を行っていたニュースも目に入ってきた。

 日本プロ野球選手会とNPO法人『ベースボール・レジェンド・ファウンデーション(BLF)』は、クラウドファンディングサービス「READYFOR」を通じ、「新型コロナウイルス感染症:拡大防止基金」への支援を表明。その寄付金は現在、5億円を超えるまでになっている。「野球で人を救う」。その中心にいたのが、プロ野球選手会長にして巨人の捕手、炭谷銀仁朗だった。

 昨年、西武からFA移籍してきた炭谷に初めて取材をした時のことをよく覚えている。扇の要と言われるキャッチャーというポジションは、投手との共同作業あって初めて成立するもの。炭谷はこう語った。

「チームのみんなに自分からコミュニケーションを取りに行くようにしているし、ブルペンに行って球を受けるようにしている」
 
 奮闘。巨人の捕手には、球界屈指の守備力を誇る小林誠司、打撃を持ち味とする大城卓三という大きな存在がいる。簡単に割り込めるとは、炭谷も感じていなかったのだろう。だがらこそ、自ら積極的にコミュニケーションを取りに行き、信頼関係を結ぼうとしていたのだ。

 また、昨年の炭谷は髙橋優貴や戸郷翔征といった若手とバッテリーを組むことが多く、さかんにアドバイスを送って彼らの成長にも一役買っていた。ルーキーの高橋がプロ初勝利を上げた試合でもマスクをかぶると、何度もベンチで話し合う姿が見られた。「(高橋は)堂々と投げていた。(菊池)雄星(現シアトル・マリナーズ)の初登板を思い出した。日に日に成長していてすごい」と、まるで父親のように喜んでいた。

 エースの菅野智之が腰痛から離脱した復帰戦、原辰徳監督はそれまでずっとバッテリーを組んできた小林に代え、炭谷を抜擢した。

「智之の景色を変えてやってくれ」

 思うようなピッチングできずに苦しんでいた菅野の、新たな引き出しを開けてほしいという指揮官の願いがそこにあった。

 昨年の交流戦戦では、パ・リーグで長く戦ってきた経験から、各球団の特徴や自分が感じたことをチームに伝えていた。そして炭谷は記者に対していつも丁寧で、裏ではよく野球の道具を磨く姿も目にした。
 
 とても実直でチームを支える存在。炭谷はまさに巨人の「縁の下の力持ち」だと思っている。

取材・文●真鍋杏奈(フリーアナウンサー)

【著者プロフィール】
まなべ・あんな。ホリプロ所属。ラジオ日本「ジャイアンツナイター」。ベンチリポーターやスポーツニュースを担当。スポーツ全般を取材。プロ野球、社会人野球、高校野球の番組を務める。趣味はスポーツ観戦。ゴルフ。

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