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プロ野球

ドラフト4位から日本最高峰の投手へ。山本由伸は自らのハンデと向き合い、飛躍の時を迎えた

西尾典文

2020.06.28

自身に合ったフォームを身に付けたことが開花の要因につながった。写真:滝川敏之

自身に合ったフォームを身に付けたことが開花の要因につながった。写真:滝川敏之

 開幕から1週間が経過したプロ野球の中で、最も大きなインパクトを残した投手となると山本由伸(オリックス)が思い浮かぶ。開幕3戦目の楽天戦で先発した21歳の右腕は、8回をわずか94球で無失点、3安打10奪三振、四死球0とほぼ完璧な内容でチームに今シーズン初勝利をもたらした。

 特に圧巻だったのが初回のピッチングだ。11球のうち9球がストレート、すべて150キロを超え、前に一球も飛ばされることなく上位打線を三者連続三振に打ち取って見せた。この様子は『パ・リーグTV』が「語り継ぎたい『山本由伸の11球』」として紹介しているほどである。

 今季緒戦のピッチング、そして昨年は高卒3年目にして防御率1点台でタイトルを獲得した球界屈指の好投手は、意外にもプロ入りは2016年ドラフトの4位指名と“低評価”だった。しかしそれには、身体的な理由が関係していた。

 筆者が現場で山本のピッチングを見たのは15年9月に行われた秋季宮崎県大会の対延岡学園高戦。最速148キロのストレートはもちろん、すべての変化球の質が高く、この年の高校生投手では屈指の実力と将来性を感じた。

 ただ、この時に居合わせたプロ球団のスカウトは「もう少し身長があれば……」とこぼしていたほどで、また、ドラフト前には故障や大学進学の話が浮上したため、4位まで“売れ残った”のである。もし進学していれば今年で大学4年生になる世代ということになるが、この活躍ぶりを見れば指名したオリックス、そして山本自身にとっても高校からのプロ入りは大正解だったと言えるだろう。
 
 高校時代から抜群のポテンシャルを見せていた山本だが、プロでも急激な速さで進化していることは間違いない。特にその変化はフォームに表れている。高校では少し反動をつけるような独特の左足の上げ方をしていたのだが、現在はシンプルな動きに変更。それだけ反動をつけなくても、しっかり体重移動できるだけの下半身の強さを身に付けたのだろう。そして、上半身の使い方と腕の振りにも変化が見える。以前はヒジの柔らかさとしなりが目立っていたが、今はそれほど肘を使った投げ方をせず、体幹全体を使って腕を振るようになっているのだ。

 前述のスカウトのコメントにもあるように、山本は身長178㎝とプロ野球選手の中では小柄な方である。長身で腕も長い選手はそのリーチを生かして速いボールを投げることができるが、そうでない選手はいかに体幹を上手く使えるかがポイントになってくる。その点、山本は“由伸体操”と呼ばれるブリッジや肩関節の可動域、コアを使ったトレーニングに取り組むことで、柔軟さを備えたパワーアップを果たしたのだろう。

 そしてこの投げ方は、球威の向上を促すとともにヒジへの負担を減らし、トミー・ジョン手術をはじめ将来的な故障の予防の役割も担っていると思われる。

 ストレートの凄みが増したのと比例して変化球も着々とレベルアップしており、投手としての総合力は日本球界でもすでに屈指のレベルであることは間違いない。果たして山本は今後どれだけ進化するのか。身体は小さくとも、そのスケールはあまりに“大きい”選手である。

取材・文●西尾典文
【著者プロフィール】
にしお・のりふみ。1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。アマチュア野球を中心に年間約300試合を取材し、全国の現場に足を運んでいる。ドラフト、アマチュア野球情報サイト「PABBlab」を今年8月にリリースして多くの選手やデータを発信している。

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