2013年6月25日のニューヨーク・ヤンキース対テキサス・レンジャーズ戦は、黒田博樹とダルビッシュ有が先発で対決するとあって、日本では事前から注目を集めていた。だがこの日、最後に主役の座をさらっていったのは別の日本人選手だった。
黒田とダルビッシュの投げ合いは、前年の4月24日に次いで2度目。この時はダルビッシュが9回一死まで無失点の快投で投げ勝っていた。ヤンキース戦の登板自体がその日以来2度目、ヤンキー・スタジアムのマウンドに上がるのは初めてだった。
しかしながら、試合は日本人ファンが期待した展開にはならなかった。黒田は3回表、レオニス・マーティン(現ロッテ)に先制ソロ弾を浴びると、4回にはエラー絡みで2点目を失う。さらに5回もマーティンに2打席連続ホームランを打たれ、3イニング連続失点となった。「1本目は不用意、2本目は勢いでやられた」(黒田)。ところがダルビッシュもピリッとせず、4・5・6回はいずれも先頭打者にソロ本塁打を喫する。これ以外の失点はなかったけれども、6回途中で球数が110球に達し、黒田より早くマウンドを降りた。
黒田は何とか粘りながら7回二死まで投げ、3-3の同点で降板。試合はそのまま9回裏を迎える。8回からレンジャーズの3番手で登板したタナー・シェパーズ(のちにロッテ)は先頭打者を歩かせたが、一死一塁で打席に立った二番打者イチローの初球に、走者のブレット・ガードナーが盗塁を試みて失敗。ツーアウトとなり、延長戦突入の空気が漂い始めた。
だが。カウント1-2からの4球目、シェパーズの投じた速球をイチローが振り抜くと、打球は高く舞い上がって右中間スタンドへ飛び込んだ。09年に、この日の勝利投手マリアーノ・リベラから打って以来2本目、ヤンキース移籍後では初のサヨナラホームラン。本人も「めっさ気持ち良かったです」と振り返った会心の一撃は、現時点で日本人打者がメジャーで放った最後のサヨナラ弾である。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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黒田とダルビッシュの投げ合いは、前年の4月24日に次いで2度目。この時はダルビッシュが9回一死まで無失点の快投で投げ勝っていた。ヤンキース戦の登板自体がその日以来2度目、ヤンキー・スタジアムのマウンドに上がるのは初めてだった。
しかしながら、試合は日本人ファンが期待した展開にはならなかった。黒田は3回表、レオニス・マーティン(現ロッテ)に先制ソロ弾を浴びると、4回にはエラー絡みで2点目を失う。さらに5回もマーティンに2打席連続ホームランを打たれ、3イニング連続失点となった。「1本目は不用意、2本目は勢いでやられた」(黒田)。ところがダルビッシュもピリッとせず、4・5・6回はいずれも先頭打者にソロ本塁打を喫する。これ以外の失点はなかったけれども、6回途中で球数が110球に達し、黒田より早くマウンドを降りた。
黒田は何とか粘りながら7回二死まで投げ、3-3の同点で降板。試合はそのまま9回裏を迎える。8回からレンジャーズの3番手で登板したタナー・シェパーズ(のちにロッテ)は先頭打者を歩かせたが、一死一塁で打席に立った二番打者イチローの初球に、走者のブレット・ガードナーが盗塁を試みて失敗。ツーアウトとなり、延長戦突入の空気が漂い始めた。
だが。カウント1-2からの4球目、シェパーズの投じた速球をイチローが振り抜くと、打球は高く舞い上がって右中間スタンドへ飛び込んだ。09年に、この日の勝利投手マリアーノ・リベラから打って以来2本目、ヤンキース移籍後では初のサヨナラホームラン。本人も「めっさ気持ち良かったです」と振り返った会心の一撃は、現時点で日本人打者がメジャーで放った最後のサヨナラ弾である。
文●出野哲也
【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。
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