プロ野球

「Withコロナ」の時代に日本の野球はどう変化していくのか。起用法だけでなく、風習・慣例にも新たなマインドが…

氏原英明

2020.06.29

ほぼ固定メンバーがお決まりだった西武にしても、選手起用に変化が見られる。写真:産経新聞社

 ビジターチーム・ソフトバンクのバッティング練習が終わり、三塁側ベンチ前に姿を現したホーム・西武ナインの人数の少なさに虚を突かれた。

 普段だとアップ、シートノックと続いていくルーティンのはずなのだが、6月28日の日曜日は、スタメンの選手たちだけがアップを行い、両チームはシートノックをすることなく両監督によるメンバー表の交換、君が代斉唱と時は流れていった。

 同一カード6連戦の6戦目、さすがにシートノックは不要に思ったのだろうか。いつもの工程が省かれたそうしたやり方に、新しい様式が生まれるつつあるのを感じずにいられなかった。

 無観客で開催が始まった2020年はいろんな意味でイレギュラーなシーズンだ。

 試合数の減少は言わずもがなだが、長距離の移動回数を減らすために、パ・リーグでは同一カード6連戦が組まれている。さらには、外国人登録枠の増員、あるいは、ベンチ枠の増枠といった違いが見られる。

 テレワークでのデスクワークなど新しい仕事様式が進む一般社会と同様に、プロ野球もまた新たなマインドが必要とされている。試合前のシートノックが削られたのも、そうした背景があってのことなのかもしれない。
 
 変化はシートノックだけではない。ラインアップやブルペンマネジメントにも、様々な工夫が見られる。

 例えば、ソフトバンクは、この6連戦で全試合スタメン出場をしたのは、栗原陵矢、柳田悠岐、バレンティン、甲斐拓也、松田宣浩、上林誠知の6人だ。24日の2回戦で西武・先発の今井達也から起死回生の逆転3点本塁打を放った今宮健太や好守備を連発する牧原大成、勝負強い打撃が光る長谷川勇也などフレキシブルな起用のされかたをしている。

 ほぼ固定メンバーがお決まりだった西武にしても、27日の試合では、好調の栗山巧をスタメンから外し、売り出し中の鈴木将平を先発起用。中村剛也をD Hに入れるための処置だが、28日は前々日に起死回生の満塁弾を放った木村文紀を休ませ、鈴木を起用していた。

 また、ブルペンに目を移すと、ソフトバンクは26日の試合で3連投になるモイネロの登板を回避。ブルペンでの調整もさせなかった。森唯斗も、この6連戦ではセーブシチュエーション以外では登板させない決断を下した。全てが結果につながったわけではないものの、目先の勝利ばかりの囚われずにマネジメントをしていこうというものだろう。