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プロ野球

座右の銘は「筋肉は裏切らない」。楽天ルーキー・津留崎大成は、全日空のインターンにも合格した文武両道の男

松山ようこ

2020.07.03

楽天ブルペンで大活躍を続ける新人、津留崎は自慢の筋肉だけでなく人柄にも定評がある。写真:滝川敏之

楽天ブルペンで大活躍を続ける新人、津留崎は自慢の筋肉だけでなく人柄にも定評がある。写真:滝川敏之

「これでデビューして試合で打たれまくったら、『使えない筋肉』ってことになります……」

 大の筋トレマニアとして知られる楽天ルーキーの津留崎大成は、キャンプでこんな不安をこぼしていた。しかしフタを開けてみれば、デビューから5試合連続無失点ピッチングと、“使える筋肉”であることを証明し続けている。

 昨年のドラフト3位でプロ入りした津留崎は春季キャンプで一軍スタートを果たすと、ムキムキに鍛え上げた上半身をアピールして、あっという間に筋肉キャラとして話題を呼んだ。ブルペンに入れば、小さなテイクバックにして目をみはる力強い直球を披露し、伊藤智仁投手コーチに「素晴らしい、新人王決定!」といわしめたほどである。

 キャンプイン数日で耳目を集めたのは、それだけが理由ではない。何しろ人柄がいいのだ。キリリとして朗らか。メディア対応やファン対応もすばらしく、気がつけば誰かが笑顔で周りにいるのだ。プロ野球選手でなかったら、インターンに合格していた全日空のパイロットになっていたかもしれない。そう思わずにはいられないほどの男なのである。

 慶応高校、慶応大学育ちの右腕は、大怪我を乗り越えた努力家でもある。高校3年生の時に右ヒジを壊し、トミー・ジョン手術を受けた。その時、同じ手術を受けたことのあるダルビッシュ有(シカゴ・カブス)のトレーニング理論に共鳴。自身も学びと感覚を磨いて身体作りに励むようになった。そして大学2年秋、長期のリハビリと独自のトレーニングによって成長を遂げる。
 
 座右の銘は「筋肉は裏切らない」。野球のため、自分仕様にチューンナップしてきた自負がある。「大胸筋をつけると投げづらいという人もいますが、僕はそう感じないんです。だから、大学時代は登板前日も筋トレしていましたよ」と胸を張る。

 と言いながらも、辰己涼介からは「お前の身体(ムキムキすぎて)気持ち悪い! オレが女の子だったら嫌や!」といじられまくったそうで、「ちょっとショックでした……」と意外なジレンマも抱えているようだが(笑)。

 ともあれ自慢の筋肉を礎にした投球フォームから、常時140キロ後半のストレートと打者の手元で変化するカットボールを放り、“マッスルカーブ”とフォークも切れ味抜群。6月21日のデビュー登板では、オリックスのアダム・ジョーンズに真っ向勝負で150キロのストレートを投げ込みセカンドゴロに仕留めるなど、マウンド度胸も発揮している。

 ちなみに、パイロットのインターン合格倍率は100倍以上の超難関。大勢の命を預かるパイロットには、たくさんの求められた資質が備わっていなければならないからだ。加えて、タフネス、不断の努力、冷静な判断力、安定したメンタリティ、謙虚さ、コミュニケーション能力など、多方面で高いレベルに達している必要がある。

 傑物としてのお墨付きをもらった津留崎は、楽天が今後直面するであろう大事な場面、“命”運がかかった場面で、最高の“フライト”をしてくれるのではないか。あの笑顔、あの人柄、あの投球。名前の通り「大成」しない理由が見当たらない。

取材・文●松山ようこ
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