「投手は２枚欲しい」

　高校野球の監督たちが、口を揃えたように言う常套句だ。

　特に夏の猛暑の中の連戦になると、いくら元気の良い高校生といえども連投はキツイ。そんなことはどこ吹く風とばかりに二人の本格化投手を揃え、今夏の茨城県独自大会の優勝候補筆頭に挙げられているのが常総学院だ。

　二枚看板の一人目は、Max150kmを誇る菊地竜雅。180cm・79kgでスリークォーターから投げ込む大型右腕は、セットポジションから大きく身体をひねる投法が特徴だ。普段は130～145kmのストレートを中心に、120km前後のスライダーとチェンジアップ、130kmのスプリットを投げ分け、変化球の精度も高い。１年夏からマウンドを任されており、同年秋の県大会ではすでに144kmを出している。試合慣れした大エースと言っていいだろう。

　他校の監督たちが「羨ましい」というもう一人の投手が、189cm・82kgでMax146kmの一條力真。美しいしなやかな腕の振りからキレのあるストレート、長身を活かした角度のあるスライダー、カーブ、落ちるツーシームを自在に操り、打者を打ち取る。この二人を支える主将の中山琉唯捕手もセンス抜群で、打撃も勝負強い。
  　対抗馬は、霞ケ浦か。183cm・84kgの体格から左腕をテンポよく振って、どんどん攻めてくる山本雄大は、昨夏の甲子園を経験したプロ注目の投手。この左腕だけでなく、昨年からレギュラーを張る小田倉啓介も能力が高い。遊撃、捕手をこなすばかりか、投手としても登板可能で、球速はなかなかのものだ。

　この２校に続くのが、石岡一だろう。投手には小松崎駿、岡崎黎人と好素材が揃い、二塁を守る塚本圭一郎も光るものを見せる。

　その他では、ショートの岡野誠也を中心にまとまり、制球力のある中川竜哉がゲームを作る土浦日大も有力校のひとつ。県立佐和では、140km台のストレートを投げる黒田晃大が注目され、明秀日立は右の大砲・久保田翔太の長打力が見ものだ。また、右から140㎞台のストレートを投げ込む土浦湖北の大坪誠之助のピッチングも評判は高い。常磐大の堀口諒太も含め、多くの好素材が揃っているのが茨城の特徴だろう。

　茨城の独自大会は11日に開幕。８月４日にノーブルホームスタジアム水戸で決勝が行われる。

取材・文●大友良行

【著者プロフィール】 おおとも・よしゆき／元大手新聞社の報道写真記者。事件事故取材の傍らメジャーリーグやサッカーＷ杯などの欧州サッカーを取材。現在は、全国の大学野球、春夏の甲子園をはじめとする高校野球、都市対抗を中心に社会人野球などを深く取材している。著書に「野球監督の仕事（共著・成美堂出版）」、「ＣＭタイムの逆襲（東急エージェンシー）」などがある。