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プロ野球

マエケンの不運で思い出す、14年オリックス金子の“幻のノーヒットノーラン”

筒居一孝(SLUGGER編集部)

2020.08.19

ノーヒットノーランを逃したという意味では、前田以上に不運だったのがオリックス時代の金子(写真)だ。写真:産経新聞社

ノーヒットノーランを逃したという意味では、前田以上に不運だったのがオリックス時代の金子(写真)だ。写真:産経新聞社

 ミネソタ・ツインズの前田健太が現地時間18日、8回までノーヒットノーランを継続しながら9回に初安打を打たれ、さらに3点をリードしていたにもかかわらず、リリーフ投手が同点に追いつかれて勝ち星すら消されるという“事件”があった。3~5回には日本人投手タイ記録の8者連続三振を奪うなど、まさに“快投”だっただけに、残念がっているファンも多い。

 この前田の不運を見て思い出したのが、2014年5月31日、当時オリックスにいた金子千尋(現・金子弐大)が巨人戦で演じた快投である。

 この年、最多勝と最優秀防御率の二冠でパ・リーグMVPを獲得する金子は、この日もまさに絶好調。初回先頭打者から4者連続三振を奪う最高の立ち上がりを見せる。その後も巨人打線に安打を許さず、気づけば9回終わっていまだノーヒットノーランだった。
 
 だが、巨人の先発が菅野智之だったのが、金子にとって逆風になった。オリックス打線は菅野から7安打を放つもののホームを踏むことはできず、7回で菅野が降板した後も山口鉄也、香月良太、スコット・マシソンらの継投の前になかなか点が取れない。なんとしても大記録を達成させたいオリックスは9回裏に猛攻をかけ、2死満塁までこぎつけるが、この場面で3番のエステバン・ヘルマンがライトフライに倒れ、結局得点することはできなかった。この試合はオリックス主催だったがDH制がなく、金子はこの回に代打を送られて降板を余儀なくされた。

 延長に突入した後も、オリックスはリリ-フした平野佳寿(現マリナーズ)が10回をノーヒットに抑える。まだ継投ノーヒットノーランの可能性があったが、延長11回表に佐藤達也が片岡治大に初安打を許してそれも潰え、ついに12回表、馬原孝浩が亀井善行にソロホームランを浴びて勝ち越しを許してしまう。12回裏はオリックス打線が久保裕也に三者凡退に抑え込まれて敗戦。金子がこの年最高の投球を披露したにも関わらず、勝利することはできなかった。

 9回までノーヒットノーランに抑えながら延長で打たれて敗戦、というケースはこれまでに6度あるが、9回までノーヒットノーランを達成しながら、延長でリリーフ投手が打たれて大記録もチームの勝利も消えたというのは、この金子が唯一の事例である。野球は一人でやるものではない。金子や前田のように好投しても報われないこともあるし、大量失点しても、それ以上の援護で味方が勝ち星をつけてくれることもある。やはり野球はチームスポーツなのだ。

文●筒居一孝(SLUGGER編集部)

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