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MLB

絶好調マエケンを陰でサポート?選手経験なしの“新世代派”投手コーチ

宇根夏樹

2020.08.20

好調ツインズを陰で支えるジョンソン投手コーチ。近年のMLBのトレンドを象徴するような存在だ。(C)Getty Images

好調ツインズを陰で支えるジョンソン投手コーチ。近年のMLBのトレンドを象徴するような存在だ。(C)Getty Images

 最近のMLBでは、プロ選手経験を持たないコーチが増えている。例えば、レッズのデレク・ジョンソン投手コーチ、ヤンキースのマット・ブレイク投手コーチ、ブルワーズのアンディ・ヘインズ打撃コーチ、ドジャースのロバート・バンスコヨック打撃コーチらは全員メジャーはもちろん、マイナーリーグでもプレーしたことがない。ごく簡単に言うと、指導者としては“素人”の元選手よりも、大学のコーチや個人指導を通じて確かな理論を身に着けた“玄人”を重用するトレンドができつつあるのだ。また、『ベースボール・アメリカ』のテディ・ケイヒル記者は、各球団が大学の投手コーチを招聘する理由について「新しいテクノロジーの活用において、大学野球はプロより進んでいる」と書いている。

 前田健太が在籍するツインズの投手コーチ、ウェス・ジョンソンもプロ経験はない。2018年オフにツインズに招聘されるまでは、強豪アーカンソー大で指導していた。大学の投手コーチから直接メジャーの投手コーチに栄転した例は、ジョンソンが史上初だという。ツインズだけでなく、マリナーズやエンジェルスもジョンソンの登用を検討していたらしい。言わば、ジョンソンはコーチ版“トップ・プロスペクト”だったというわけだ。
 
 現在、ジョンソンは48歳。アーカンソー大を卒業後、高校のコーチに就任し、10年からはダラス・バプティスト大、ミシシッピ州大、アーカンソー大のコーチを歴任してきた。投手コーチとしてのジョンソン特徴は、バイオメカニクス(生体力学)とデータ解析の融合にある。彼の指導を受けて球速が向上する投手が続出したことで評価を集めていた。近年は、トラックマンやラプソードなどの最新機器の活用が当たり前になりつつある今、指導する側にもデータへの深い理解が求められる。ツインズがジョンソンを抜擢した理由もそこにある。

 成果は早くも現れた。チーム防御率は18年のリーグ9位の4.50から5位の4.18に改善され、強力打線の援護もあって9年ぶりの地区優勝。今季もここまで防御率リーグ2位と好調を維持している。昨季、とりわけ進境著しかったのは、リリーフ右腕のタイラー・ダフィーだ。4シームの平均球速が上がったのに加え、ジョンソンのアドバイスで各球種の割合を変えた結果、奪三振率は前年の6.84→12.80、防御率は7.20→2.50と劇的に改善された。今季も9登板でまだ失点を与えていない。

 ダフィーによると、ジョンソン投手コーチの指導の特徴は「重要な場面でその投手の最高のボールを多投させること」だという。ジョンソン自身はこう言っている。「コーチとしての私の職務は欠点を矯正することではなく、それぞれの投手の最大の長所を見つけ、それを最大限に発揮する方法を見出すことだ」。実は前田も、今季は以前にも増してスライダーとチェンジアップ中心の投球になっている。もしかしたら、これも「得意球を多投すべし」というジョンソンの指導の影響かもしれない。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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