MLB

トラウトがいるのに最下位に低迷…エンジェルスはなぜ弱いのか

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2020.08.30

マッドン監督を招聘したにもかかわらず、地区最下位に低迷するエンジェルス。5年連続の負け越しが濃厚だ。(C)Getty Images

 大谷翔平が所属するエンジェルスが苦しんでいる。今季から名将ジョー・マッドンを招聘にしたにもかかわらず、8月30日時点で12勝22敗、勝率.353でア・リーグ西地区最下位に低迷。29日には内野手のトミー・ラステラをアスレティックスに放出し、5年連続の負け越しが濃厚となっている。

 シーズンMVPに3度も輝くマイク・トラウトという球界最大のスーパースターを擁し、豊富な資金力を誇るにもかかわらずなぜここまで低迷が続くのか。もちろん、大谷自身の不振も一つの要因ではあるが、それ以上に根深い問題が横たわっている。3つの観点から分析してみよう。

①投手陣の崩壊
 ここ数年来、エンジェルスは投手力不足に悩まされている。今季は新加入のディラン・バンディが意外な活躍を見せているが、にもかかわらず防御率5.41はリーグワースト3位。昨年は規定投球回をクリアした投手が皆無で、100イニングを超えたのも一人だけだった。
 
 にもかかわらず、ビリー・エプラーGMはオフのFA市場でゲリット・コール(現ヤンキース)、リュ・ヒョンジン(現ブルージェイズ)といった一線級の先発投手補強には動かず、三塁手のアンソニー・レンドーンを7年2億4500万ドル(約258億円)という超大型契約で獲得。当時から「補強が必要なのは先発投手だったのでは?」という声が出ていたが、結果的にその懸念が的中する形になった。

 若手投手が肩やヒジを痛めるケースが後を絶たないのも近年のエンジェルスの特徴だ。タイラー・スキャッグス(昨年7月にオピオイドの過剰摂取で死去)に始まり、ギャレット・リチャーズ(現パドレス)、アンドリュー・ヒーニー、そして大谷と期待の投手がトミー・ジョン手術を受けるケースが頻発。手術には至らなかったものの、今年は2年目のグリフィン・キャニングが右ヒジの違和感で一時離脱。投手に故障は付き物とはいえ、ここまで怪我が多いと球団のケアや管理体制に問題があると言わざるを得ない。