専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
プロ野球

「俺たちの福浦」、有終のダイビングキャッチ。4打数ノーヒットも引退試合を勝利で飾る

氏原英明

2019.09.23

通算安打数はちょうど2000本。最後は鮮やかなダイビングキャッチを披露し、福浦は26年間のプロ生活にピリオドを打った。(写真)朝日新聞社

通算安打数はちょうど2000本。最後は鮮やかなダイビングキャッチを披露し、福浦は26年間のプロ生活にピリオドを打った。(写真)朝日新聞社

 全選手が背番号9の重みを感じながらプレーしていたに違いない。
 
 2019年9月23日。この日は、マリーンズファンにとって、いや千葉県民にとって、これまで当たり前にあったものがなくなってしまう日だった。


 福浦和也がこの日限りでユニフォームを脱ぐ。

 地元出身のフランチャイズ・ヒーローに敬意を表し、ロッテナインは全選手が背番号9を身に纏いプレーした。

 試合はその思いを背負うかのようにロッテナインは躍動した。

 先発の石川歩が初回を三者凡退と最高のスタートを切ると、その裏、1番の荻野貴司がセンター前安打で出塁。荻野が捕逸で二塁に進むと、2番の鈴木大地が左翼へのタイムリー二塁打を放ってあっという間に1点を先制した。

 続く3番・マーティンは死球で出塁し、4番の井上晴哉が左翼前へ適時打を運び1点を追加。清田育宏も右翼前適時打で3点目。6番の中村奨吾は左翼フライに終わるが、ここで福浦を迎えるまでに3点を先行したのだった。

 そして、福浦は2死一、二塁の好機で1打席目を迎えた。

 1球目、2球目と外に外れてボール。相手先発の堀瑞輝は制球が定まっていなかったが、3、4球目のストレートを福浦は振りに行ってファウル。カウント2―2となってからの5球目、やや詰まらされて遊撃ゴロに終わった。

 2ボールナッシングから手を出すあたりは、福浦らしさを感じられずにいられなかった。

 かつて、福浦がこんな話をしていたものだ。

「代打での出番があった時は特に考えるんですけど、初球から振りたいなと。早く試合に入っていきたいというのがあります」

 おそらく、1打席目は代打で向かうくらいの気持ちだったに違いない。

 2打席目は先頭打者として迎えた。

 初球は見逃してストライク。ボールを挟んだ後、3球目のストレートをファウル。そして、4球目もストレートだったが、ピッチャーの足元に弾き返したボールを好捕されて、投手ゴロに終わった。
 第3打席は5回裏、先頭の中村が左翼前安打を放ってから迎えた。
 スタンドからは習志野高校の応援歌が響き、スタンドは大きく盛り上がった。初球を見逃し、3球ファウルを打った後、5球目のストレートをとらえたかに見えたが、右翼への飛球に終わった。

 第4打席は7回裏だった。

 先頭打者として迎え、1球ボールの後、2球目をスウィングしてキャッチャーフライに終わった。

 4打数ノーヒットだったが、試合はこれでは終わらなかった。

 6−1で迎えた9回表、一塁守備に就いた福浦は、2死一塁から、日本ハムの平沼翔太が放った一、二塁間への痛烈なライナーをダイビングキャッチ。ウイニングボールをキャッチしてみせた。

 真剣勝負の中のビッグプレー。美しすぎる結末。「俺たちの福浦」は最後まで絵になる男だった。
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号