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【現地発】寂しさを禁じ得ない“異例“のワールドシリーズ。感染症対策もNBAに劣るが、それでも…

杉浦大介

2020.10.26

“熱戦”続きのワールドシリーズ。フィールドの戦いはすごい一方で、やはり随所にコロナ禍の影がちらつき……。(C)Getty Images

 ドジャース、レイズのどちらが勝ち残ろうと、2020年のワールドシリーズが歴史的な戦いとして語り継がれることはすでに間違いない。

 新型コロナウイルスによる影響で、通算116度目にして初めて中立地開催となった今年の最終決戦。両リーグの最高勝率チーム同士が激突する"横綱対決"は、さまざまな意味で前例のないシリーズとなっている。

 会場となったのはテキサス州アーリントンにオープンしたばかりのグローブライフ・フィールド。過去10年以上、ワールドシリーズは欠かさず現場取材してきた私から見て正直、今季のシリーズは「素晴らしい雰囲気の中で行われているとは言い難い」。
 
 同じくこの球場で開催されたナ・リーグ優勝決定シリーズから今季初めて客入れが許され、ワールドシリーズでも第1戦では観衆1万1388人、第2戦も1万1472人を動員。ソーシャル・ディスタンスを守った上で収容人数4万518人の球場に約30%弱のファンが入ったものの、見た目的にも、歓声のボリューム的にも、やはり寂しさは否定できなかった。得点機の場面などにはそれなりに盛り上がるものの、率直にいって「世界一を争うステージ」らしい豪華さはそこには存在しない。

 また、NBAがオーランドのディズニーワールドに作り上げた「バブル」での取材も経験した一人として、MLBの安全対策も万全には思えなかった。スタジアム内にはマスク着用の指示をはじめとする数多くのインストラクションが張り出され、消毒液も多めに設置。ホットドッグ売り場、メディア食堂などでもキャッシュの受け渡しを避けるため、すべてクレジットカードでの支払いが義務付けられるという工夫は見られた。

 しかし、食事売り場などにはかなりの数の人が密集。グッズ売り場にも長蛇の列ができているのを見ると、不安を感じずにはいられなかった。最後まで無観客のままプレーオフを戦い終えたNBAの「バブル」では「ここにいる限りは大丈夫だろう」という安心感があったが、グローブライフ・フィールドでは必ずしも同じようには感じられなかったのである。
 
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“夢の舞台”ではないが、ファンがいることの喜びはやはり格別