プロ野球

【氏原英明の本音で勝負!】アメリカでの12年の経験は日本の宝となるはず。田澤純一の財産を無駄にするな!

氏原英明

2020.11.02

トミー・ジョン手術にワールドチャンピオン獲得……田澤のアメリカでの貴重な体験は日本球界にとって財産になるはずだ。(C)Getty Images

 今年のドラフト会議では、支配下と育成合わせて123人が指名された。大学生が史上最多の55人を数えるなど、「大学生豊作年代」との前評判がそのまま結果に表れた形だ。一方で、社会人は都市対抗野球前のドラフトだったことが影響したのか、いつもほどの人気はなかった。

 そして、日本復帰を視野に入れていた元メジャーリーガーの田澤純一も指名漏れとなった。

 ドラフト会議の趣旨を鑑みれば、当然と言えば当然である。

 そもそも、「新人」とは言えない田澤をドラフト対象選手にすること自体がおかしい。NPB12球団の田澤そのものへの評価ではなく、システムの歪さが表れたと見るべきだろう。すでに34歳で、今後5年のキャリアを望める保証がない選手を指名するリスクを負うのは簡単なことではないのだ。

 ただ一つ疑問として残るのは、通称"田澤ルール"を撤廃しておきながら、なぜ、ドラフト以前に「田澤をドラフト対象選手から外すべき」という声が上がらなかったという点だ。誰も得しない田澤への扱いに異議を唱えなかったことは非常に寂しい限りだ。
 
 もし、田澤がドラフト対象から外れて自由にNPB球団と交渉する立場になっていれば、今頃、CSを争うチームでマウンドに立っていたかもしれない。それこそ、ロッテのチェン・ウェインのように。

 今年の春までマリナーズのマイナーにいたチェンと、レッズのマイナーにいた田澤は置かれていた立場は同じだったが、日本のプロ経験を持つチェンはNPB球団と契約でき、田澤は叶わなかった。ちなみに、彼らは1学年違いのほぼ同世代だ。

 田澤を特例にするべきだと言いたいのではない。即戦力になる可能性を秘めた選手を古びたルールによって獲得できないのは、球界全体にとって損失でしかない、ということだ。

 今後、田澤はアメリカ、台湾、韓国など海外リーグでのプレーを模索することになるだろう。彼の雄姿を日本で見られないのは残念でしかないが、ここではもう一つの視点に触れたい。

 それは田澤の経験・知識の還元だ。