プロ野球

最多勝の菅野か二冠王の岡本かそれとも…セ・リーグMVPに最もふさわしいのは誰?

SLUGGER編集部

2020.12.16

セ・リーグのMVP争いは菅野(左)と岡本(右)のどちらかになりそうな気配だが、実際の投票結果はどうなるか。写真:塚本凜平(THE DIGEST写真部)

 2020年のセ・リーグMVPは一体誰がふさわしいのか? ほとんどのプロ野球ファンは、巨人のリーグ2連覇に貢献した菅野智之か岡本和真の名前を挙げるのではないだろうか。

 確かに2人の活躍は目覚ましかった。菅野は開幕戦からの13連勝というプロ野球記録を樹立し、最終的に14勝を挙げて最多勝と勝率のタイトルを獲得。一方、岡本はセ・リーグで唯一30本塁打台に到達し、97打点と併せて二冠を獲得した。

 日本ではアメリカ以上に優勝チームからMVPを選出する傾向が強いこともあり、実際に17日のNPB AWARDでも菅野か岡本の名前が読み上げられる可能性が高い。

 だが、2人は本当にMVPにふさわしいのか。いまいちど、冷静に2人の成績を振り返ってみよう。

 まず菅野の場合、最多勝は獲得したものの、防御率や投球回では大野雄大(中日)らに次いでリーグ3位。実際、沢村賞を獲得したのは菅野ではなくて大野だった。
 
 セイバーメトリクス指標ではどうだろうか。投手の責任範囲である与四球・奪三振・被本塁打加え、ゴロや内野フライ、ライナーなど打球内容も考慮して算出したtRAという指標がある。一般的にはまだあまり知られてはいないが、運不運の要素を可能な限り排除することで、防御率よりも投手の実力を正確に反映すると言われる有用な指標だ。このtRAでも、菅野はリーグ2位の2.95で大野(2.67)の後塵を拝している。

 二冠王の岡本も、総合打撃指標で見るとかなりイメージが変わってくる。OPS(出塁率+長打率)は.907で、リーグ1位の村上宗隆(ヤクルト)に100ポイント以上差をつけられての8位。チームメイトの丸佳浩や梶谷隆幸(DeNA)をも下回った。

 今季の岡本は三塁の守備でも目覚ましい進歩を見せており、その貢献は決して打撃だけにとどまるものではなかった。それでも、総合的な勝利貢献を表すWARでも岡本はリーグ6位の4.9、菅野にいたってはベスト10圏外だった(表参照)。つまり、菅野も岡本も「文句なしのMVP!」と太鼓判を押すにはやや物足りないと言わざるを得ない。

【表】2020年 セ・リーグ WARベスト10