プロ野球

【プロ野球トレード収支の大検証:第4回】強打者・大豊がメインのはずが…“おまけ”の矢野が名捕手に成長

出野哲也

2021.01.03

阪神では3度のベストナインと2度のゴールデン・グラブ賞を獲得した矢野(写真左)。03年には井川慶、05年には藤川球児(写真右)とのコンビで、最優秀バッテリー賞も受賞している。写真:産経新聞社

1998年
矢野輝弘、大豊泰昭(中日)⇔関川浩一、久慈照嘉(阪神)
阪神 +159.9/中日 -159.9


矢野輝弘    阪神    打率.276、98本塁打、510打点    135.3
大豊泰昭    阪神    打率.258、62本塁打、154打点    24.6
関川浩一    中日    打率.283、12本塁打、192打点    -11.2
久慈照嘉    中日    打率.256、0本塁打、36打点    -4.5

 1997年、新球場のナゴヤドームに移った中日は、それまでの本拠地ナゴヤ球場とは正反対の広いグラウンドで勝手が違ったのか、最下位に転落してしまう。ドームに適合したチームへ変革する必要性を感じた星野仙一監督は、主砲・大豊の放出を決意した。94年は38本塁打、107打点の二冠でリーグ3位のPV41.0、96年にも38本塁打でPV27.6と打ち続けていた大豊も、すでに34歳。97年は球場が広くなったこともあり12本塁打と長打力を発揮できず、PV-4.5はルーキーイヤー以来のマイナスに落ち込んでいた。2億円近い高額年俸を整理したいとの考えもあり、一塁には山崎武司を外野からコンバートすればいいとの計算もあった。
 
 ターゲットはレギュラー不在だった遊撃手で、好守で知られた久慈はその条件に適っていた。92年に新人王を受賞した久慈は、通算打率.258、5本塁打、PV-24.0が示すように打撃は弱かったものの、97年はOPS.659/PV-4.4。中日で最も多く遊撃を守った鳥越健介(OPS.536/PV-11.4)に比べれば上で、何より星野が目指していたセンターラインの守備強化にうってつけだった。阪神にとっても、リーグ最少の103本塁打だった打線に長距離砲の大豊を加えるのは理にかなっていたし、決まったレギュラーのいなかった一塁を固定できるメリットもあった。

 ただし大豊と久慈の1対1ではバランスが悪いため、2対2の形となった。正捕手不在の阪神は当初、強肩のキャッチャー・中村武志を希望し、交換要員として桧山進次郎を提示したが不成立。代わりに大阪出身の控え捕手・矢野をもらい、捕手兼外野手の関川を放出した。関川は96~97年は規定打席不足ながら打率3割以上の巧打者で、中日はコンバート予定の山崎に代わる外野手にと見込んでいた。
 
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