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プロ野球

【プロ野球トレード収支の大検証:第6回】平成最大の衝撃のトレード――日本ハムリーグ優勝の立役者・糸井がまさかの放出

出野哲也

2021.01.05

オリックスでの糸井は14年に首位打者&最高出塁率、16年には史上最年長で盗塁王獲得と活躍を続けた。写真:産経新聞社

オリックスでの糸井は14年に首位打者&最高出塁率、16年には史上最年長で盗塁王獲得と活躍を続けた。写真:産経新聞社

2013年
糸井嘉男、八木智哉(日本ハム)⇔大引啓次、木佐貫洋、赤田将吾(オリックス)
オリックス +118.4/日本ハム -181.8


糸井嘉男    オリックス    打率.300、70本塁打、280打点    122.4
八木智哉    オリックス    0勝2敗0S、防御率7.98    -7.2
大引啓次    日本ハム    打率.255、8本塁打、79打点    4.0
赤田将吾    日本ハム    打率.269、2本塁打、13打点    -0.8
木佐貫洋    日本ハム    10勝11敗0S、防御率3.56    0.3

 21世紀以降では最大級の“衝撃のトレード”。2012年に優勝したばかりの日本ハムが、リーグ3位の打率.304、同2位のPV29.1を記録していた中心選手の糸井を、同じパ・リーグのオリックスに放出したのである。11年まで日本ハムに在籍していたダルビッシュ有(当時レンジャーズ)も、これを知って「糸井さんトレードとか、ありえん」とツイートしたほどだった。

 糸井は12年シーズン終了後、ポスティングシステムを利用してのメジャー行きを希望した。これを球団側が承諾せず、一度は残留で落ち着いたものの、水面下でトレードを画策。弱点となっていた遊撃手を強化する存在として、オリックスの大引に目をつけた。12年は打率.224ながらPV1.8、プロ6年間通算ではPV4.0と攻守に堅実な成績を残していた選手だった。
 
 日本ハムは、12年シーズンにローテーション投手として13試合に登板し、6勝を挙げていた八木(PV-2.6)を糸井にプラス。オリックスは大引に加えて、チーム最多の152.1回を投げて防御率2.60(PV7.3)の成績を残した木佐貫、ベテラン外野手の赤田を放出し、2対3の交換トレードが13年のキャンプイン直前に成立した。

 日本ハムは11年オフにダルビッシュをポスティングにかけており、この制度の利用そのものに対しては否定的でなかった。糸井がポスティングを希望したのも、そうした経緯があったからだろう。だが、メジャーで複数球団が争奪戦を繰り広げ、結果的に5170万ドル(約38億7800万円)もの移籍料をもたらしてくれたダルビッシュとは違い、野手の糸井への評価はそれほど高くはなく、日本ハム側が対価としてふさわしいと考えるだけの入札金が見込めそうになかった。さらに、糸井の31歳という年齢や、2億円を超える年俸などさまざまな要素が重なり合った結果、放出して交換要員を得た方が得だとの判断に至ったと考えられる。

 なお、現在ではこのトレードの背景として、同年秋にドラフト1位で入団した大谷翔平の“二刀流”を実現するため外野のポジションを空ける意図があったのだ、との説も流布している。だが、大谷のポジションを用意するためだけに、チームの中心選手を放出する必要はない。糸井の穴埋め候補とは考えていたかもしれないが、放出する動機だったというのはあり得ないだろう。
 
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