プロ野球

【12球団ドラフト展望:広島】「タナキクマル」の次の時代へ向けてどのようなビジョンを描くか

出野哲也

2019.10.07

早ければ来年にもMLBへ移籍する可能性がある菊池。野村、會澤もFAとなるだけに、次世代のチームをどう作るか球団のビジョンが問われる。写真:徳原隆元(THE DIGEST写真部)

【2019ドラフトのテーマ】
・菊池のMLB移籍も見据えて二遊間の補強
・先発陣投手を安定させるため実戦型の即戦力獲得


 リーグ4連覇どころかBクラスに転落してCS進出すら果たせず、責任を取って緒方孝監督も退任と残念なシーズンになってしまった。大量補強を敢行してV奪回を願うファンもいるかもしれないが、野村祐輔や會澤翼がFAになり、バティスタは薬物騒動で行き先不透明、菊池涼介もメジャー挑戦を希望するなど、チームとしては過渡期にさしかかっている。来季だけにとらわれることなく、長期的な視野に立って立て直しを図っていきたい。

 ドラフトでは松田元オーナーが自ら年齢分布図を参照し、バランスのいい指名を心がけているおかげで、構成上は明白に歪みの生じている箇所はない。昨年のドラフトでは1位の小園海斗をはじめ高校生内野手を4人も獲得するなど、常に将来を見据えた戦略を採っているあたりは、さすがは「育成のカープ」か。特に小園は1年目から一軍の正遊撃手を窺うまでに成長している。
 
 とはいえ、小園はまだ攻守に課題も多く、本来なら焦らずじっくり育てていきたいところ。一方で、今季、故障もあって予想外の不調に苦しんだ田中広輔は来年32歳になる。また、先述したように菊池は近い将来のMLB移籍が噂される。というわけで、小園と田中、菊池の間を埋める年齢層の内野手が欲しい。内野ならどこでも守れる小深田大翔(大阪ガス)なら、ユーティリーティ要員としても理想的だ。守備職人になり得る諸見里匠(日本通運)もカープらしい雰囲気を持っている。 

 1位候補は佐々木朗希(大船渡高)、奥川恭伸(星陵高)で、特に松田オーナーは佐々木を強く推しているようだが、西純矢(創志学園高)を一本釣りするのではとの噂も根強い。例年なら複数球団の入札があってもおかしくない逸材である上、元カープの前田健太(現ドジャース)に憧れる広島ファンでもある。単独で取れるのならおいしい指名で、駒大苫小牧高の田中将大に向かわずPL学園高の前田を単独で獲得した06年ドラフトのように、奥川、佐々木を回避しても文句は言われないだろう。