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22歳にして最強軍団アストロズの中軸を務めるヨーダン・アルバレス、怪物スラッガーに隠された〝ルーツ〞とは?

城ノ井道人

2019.10.28

次々に球史の記録を塗り替えるアルバレス。もう新人王は確実か。(C)Getty Images

 今シーズンも数々のルーキーが華々しい活躍を見せているが、次々に球史を塗り替えるアルバレスの破壊力、完成度の高さは群を抜いている。22歳にして最強軍団アストロズの中軸を務める男の打棒、いかにして生まれたのか。怪物スラッガーに隠された〝ルーツ〞とは一体?

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 今まさに、恐ろしい怪物が誕生している。だが、彼の周りは意外なほど静かだ。アストロズの指名打者ヨーダン・アルバレスのことである。ヒューストンという街のせいか、WARによる評価が広まってDHという役割が地味になったせいなのか分からないが、デビュー後の快進撃と比べてメディアの注目度がイマイチな気がしてならない。

 6月9日にメジャー初昇格してから、彼のバットは失速することなく火を噴き続けている。球団初のデビューから2試合連続本塁打。12試合で7本塁打は球団記録、16打点はメジャー新記録だった。6月は16試合で打率.317、7本塁打、21打点で月間最優秀新人を受賞。7月22日にはデビュー30試合での打点記録(35)も更新し、月間打率.333、5本塁打、15打点で再び最優秀新人に選ばれた。8月10日には自身初の1試合3本塁打で7打点を叩き出し、デビュー45試合で51打点は1939年にテッド・ウィリアムズが記録した47打点を塗り替えた。
 
 1940年以降でデビュー50試合でのOPS1.093はウィリー・マッコビー(1.110)、プーホルス(1.104)に次いで歴代3位……レジェンドたちにまったく引けを取らない〝レコード・ブレイカー〞に「もう新人王は確実ではないか?」との声が上がっているが、彼はセンターステージに姿を現さない。淡々と打ち続け、8月も打率.309、9本塁打、26打点で3か月連続でアウォードに輝いた。

 デビューから3か月連続で打率3割、出塁率4割、OPS1.000超えの成績である。当たり前だが、これは尋常ではない。2年前のコディ・ベリンジャー(ドジャース)のルーキーイヤーを覚えているだろうか。本塁打を量産して大いにスポットライトを浴びたが、打率3割、出塁率4割をクリアした月は一度もなかった。OPS1.000超えも6月だけだ。繰り返そう。アルバレスは3か月連続でこのエリートラインをクリアしているのである。

 だが、彼は自分の扱いに不満を持っておらず、スター軍団の中にうまく溶け込んでいる。「落ち着いていて冷静なのは僕のパーソナリティなんだ」。物静かな彼はクラブハウスではどちらかというといじられキャラ。デビュー戦の思い出を聞かれると彼はこう話す。「(カルロス・)コレア、投手たち、誰もが僕に『今日、本塁打を打たなければ罰金だ』と言ってきたんだ。そして僕は打った。だから罰金はなし! 絶対に忘れられない思い出さ」