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球界屈指の凄腕GM、ジェフ・ルーノーの徹底した勝利至上主義とは?【新MLB珍獣図鑑】

2019.11.23

球界随一のデータ分析力と手段を選ばない徹底した勝利至上主義。17年には球団創設以来初の世界一をもたらした。(C)Getty Images

球界随一のデータ分析力と手段を選ばない徹底した勝利至上主義。17年には球団創設以来初の世界一をもたらした。(C)Getty Images

 規格外のパワー。超絶テクニック。そして何より、個性的なキャラクターの“珍獣”が数多く集まっているのがメジャーリーグの魅力。全米各地に生息している多種多様な愛すべき“珍獣”たちを紹介していこう!今回紹介するのは球界屈指の凄腕GM、ジェフ・ルーノー。

    ◆    ◆    ◆

 ビリー・ビーン(アスレティックス)が『マネーボール』で取り上げられて以来、GMという仕事はすっかり花形になった感がある。

 今、球界で最も腕利きのGMと言えばアストロズのジェフ・ルーノーをおいていないだろう。彼の経歴は、まさに「現代のGM像」そのものだ。ペンシルベニア大で工学と経済学を学び、ノースウェスタン大ケロッグ大学院でMBAを取得。その後、マッキンゼー&カンパニーでコンサルタントを務めるなどして、2003年にカーディナルスへ。育成部長としてドラフトで好指名を連発したことで名を挙げた。

 11年オフにアストロズのGMに就任すると、再建のため徹底的にチームを解体しつつ、ファーム組織を再建。ボールの回転量の重要性にいち早く目をつけるなど、球界随一のデータ分析力も駆使しながら17年に創設以来初の世界一を成し遂げた。

 このように、手腕に関しては文句のつけようのないルーノーだが、同時に彼は球界きっての嫌われ者でもある。もちろん、そこには成功者へのやっかみも多分に含まれているのだが、世界一になる前の段階から「対人スキルの欠如」や「人を人とも思わない冷酷な性格」が問題視されていた。データ部門の強化を推し進める一方、多くのスカウトをクビにしたことも、その是非はともかく業界内で敵を増やすことにつながった。
 
 勝つためなら手段を選ばないルーノーの徹底した勝利至上主義は、生き馬の目を抜く球界でも群を抜いている。昨年のドラフトでルーノーは、幼児へのいたずら事件で逮捕歴のあるオレゴン州大のルーク・ハイムリックを強行指名しようとしたと言われている。この時は周囲の猛反対で翻意したものの、その1ヵ月後、今度はDVで事件を起こして出場停止中だったロベルト・オスーナをブルージェイズからトレードで獲得した。この時も多くの反対意見が出ていたが、ルーノーが押し切ったという。皮肉だったのは、アストロズがDVに対して「ゼロ・トレランス(いかなる違反も許さない)」方針を掲げていたこと。もちろん、ルーノーは大きな批判を浴びたが、どこ吹く風だった。

 極めつけが、レッドソックスとのリーグ優勝決定シリーズで起きたスパイ事件だ。アストロズの球団職員がレッドソックスのベンチをスマートフォンでずっと撮影していることが発覚して大問題になったが、ルーノーは「相手がサイン盗みをしていないかどうか調べていた」と弁明。もちろん、その言い分を信じた者は皆無だった。実は、地区シリーズでアストロズと対戦したインディアンスからレッドソックスに「アストロズが怪しいことをしているから気を付けろ」と連絡が入っていたという。ある記事では、某ア・リーグ球団幹部による「こんなものは氷山の一角。アストロズは何年間も(サイン盗みを)やってきた」というコメントが紹介されていた。
 

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