今月初旬、元エンジェルス監督のマイク・ソーシアが、アメリカ代表チームの監督に就任した。2000年から18年までエンジェルスで監督を務めたソーシアは、02年にワイルドカードから球団初のワールドシリーズ優勝を飾り、以降13年間(02~14年)のポストシーズン進出は7度を数える。02年と09年は最優秀監督賞も受賞した。
名将の仕事は、当然だが代表チームを五輪の舞台まで導くことだ。アメリカ代表は19年11月にフィリピンで行われた予選で4位に終わり、まだ東京オリンピックの出場権を得ていない。現時点でオリンピック出場が決まっているのは、日本、韓国、メキシコ、イスラエルの4か国だ。出場枠はあと2つ。まず、ソーシアは6月に、フロリダで開催される北米&南米予選で指揮を執る。
この予選では、グループAのアメリカ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ニカラグア、グループBのキューバ、ベネズエラ、コロンビア、カナダのうち、各グループの1位と2位が次のラウンドへ進出し、そこで1位となったチームが出場権を手にする。2位と3位は同月に台中で行なわれる最終予選に回り、台湾、オーストラリア、中国、オランダと最後の出場枠を争う。
監督生活最後の3年は続けて負け越し。また、データを積極的に活用する姿勢も見せず、当時のジェリー・ディポートGM(現マリナーズGM)と反目したこともある。そのため、時代に遅れ始めたという声も出ていたが、それが事実だとしても、オリンピックでは問題にならないだろう。同じ相手と何度も対戦するメジャーのシーズンと違うからだ。それに、ソーシアはまだ62歳。現エンジェルス監督のジョー・マッドンより5歳若い。
また、ソーシアは、アメリカが最後に金メダルを獲得した00年シドニー五輪の時の代表監督だった故トミー・ラソーダとも関係が深い。76年にドラフト全体19位でドジャースから指名された時、ソーシアは大学へ進むつもりだった。だが、当時は三塁コーチだったラソーダに「ドジャースの選手になる機会はこれが最初で最後」と口説かれ、入団を決意したという。
その数か月後にラソーダはドジャースの監督へ就任。80年にメジャーデビューしたソーシアは、92年までのキャリアすべてをラソーダ監督の下でプレーした。81年と88年にワールドシリーズ優勝の美酒も味わっている。さらに、2人ともイタリアにルーツを持つことも共通している。ソーシアが18年にラソーダの監督通算1599勝を上回った時、ラソーダは「彼は地上に神が遣わせた素晴らしい監督で素晴らしい選手の一人。とても誇りに思う」とコメントした。
今年1月、ラソーダは93歳の生涯を閉じた。ソーシア率いるアメリカ代表チームが出場権を獲得し、もし金メダルを獲得することができれば、ラソーダへ向けた最高の追悼となるに違いない。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
名将の仕事は、当然だが代表チームを五輪の舞台まで導くことだ。アメリカ代表は19年11月にフィリピンで行われた予選で4位に終わり、まだ東京オリンピックの出場権を得ていない。現時点でオリンピック出場が決まっているのは、日本、韓国、メキシコ、イスラエルの4か国だ。出場枠はあと2つ。まず、ソーシアは6月に、フロリダで開催される北米&南米予選で指揮を執る。
この予選では、グループAのアメリカ、ドミニカ共和国、プエルトリコ、ニカラグア、グループBのキューバ、ベネズエラ、コロンビア、カナダのうち、各グループの1位と2位が次のラウンドへ進出し、そこで1位となったチームが出場権を手にする。2位と3位は同月に台中で行なわれる最終予選に回り、台湾、オーストラリア、中国、オランダと最後の出場枠を争う。
監督生活最後の3年は続けて負け越し。また、データを積極的に活用する姿勢も見せず、当時のジェリー・ディポートGM(現マリナーズGM)と反目したこともある。そのため、時代に遅れ始めたという声も出ていたが、それが事実だとしても、オリンピックでは問題にならないだろう。同じ相手と何度も対戦するメジャーのシーズンと違うからだ。それに、ソーシアはまだ62歳。現エンジェルス監督のジョー・マッドンより5歳若い。
また、ソーシアは、アメリカが最後に金メダルを獲得した00年シドニー五輪の時の代表監督だった故トミー・ラソーダとも関係が深い。76年にドラフト全体19位でドジャースから指名された時、ソーシアは大学へ進むつもりだった。だが、当時は三塁コーチだったラソーダに「ドジャースの選手になる機会はこれが最初で最後」と口説かれ、入団を決意したという。
その数か月後にラソーダはドジャースの監督へ就任。80年にメジャーデビューしたソーシアは、92年までのキャリアすべてをラソーダ監督の下でプレーした。81年と88年にワールドシリーズ優勝の美酒も味わっている。さらに、2人ともイタリアにルーツを持つことも共通している。ソーシアが18年にラソーダの監督通算1599勝を上回った時、ラソーダは「彼は地上に神が遣わせた素晴らしい監督で素晴らしい選手の一人。とても誇りに思う」とコメントした。
今年1月、ラソーダは93歳の生涯を閉じた。ソーシア率いるアメリカ代表チームが出場権を獲得し、もし金メダルを獲得することができれば、ラソーダへ向けた最高の追悼となるに違いない。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。