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レジェンド二塁手アロマーの性的不正行為が事実認定。MLB機構を解雇、古巣からも三行半、でも野球殿堂は?

宇根夏樹

2021.05.04

11年の式典で殿堂入りプラークを手渡されるアロマー(右)。スキャンダルで彼の名声は地に落ちたが、このプラークは引き続き殿堂に飾られる。(C)Getty Images

 現地時間4月30日、MLB機構はコンサルタントのロベルト・アロマーを解任し、資格停止リストに入れたことを発表した。

 経緯はこうだ。今年の初め、球界で働いていた女性スタッフが、アロマーから2014年に性的な不正行為を受けたと訴え出た。これを受け、外部機関を通して調査を行なってきたMLB機構は、アロマーの行為が機構の規約に違反しているという結論に達し、処分に踏み切ったのだ。資格停止リストに入っている人物は、MLB機構だけでなく、メジャー球団や傘下のマイナー球団に在籍することもできない。

 現役時代のアロマーは、スイッチヒッターの二塁手として輝かしいキャリアを築いた。1988年から04年までメジャーでプレーし、二塁手では歴代8位の通算2724安打、同5位の474盗塁を記録。ゴールドグラブ受賞も二塁手最多の10度を数えるなど走攻守すべてで活躍した。ブルージェイズでは92~93年のワールドシリーズ連覇に貢献し、インディアンス時代に遊撃手のオマー・ビスケルと演じた鮮やか併殺プレーは、それだけで一見の価値があった。引退後は、2度目となる11年の投票で殿堂に迎え入れられている。

 今回の処分に対し、アロマーが自身のツイッターで発表した声明文には「今日のニュースには失望し、驚き、動揺している。現在の社会情勢からして、MLB機構がなぜそうしたのかは理解できる。この告発について、自分も主張できる場を望んでいる」とある。ただ、問題の行為そのものを否定はしていない。
 
 アロマーの背番号12を永久欠番に指定しているブルージェイズも、MLB機構と足並みを揃え、関係をすべて絶つと発表した。球団で功績を残した選手や関係者を称える「レベル・オブ・エクセレンス」からアロマーを除名し、本拠地球場に掲げているアロマーのバナーも外す。

 一方、殿堂の対応は、MLB機構とブルージェイズとは異なる。アロマーのプラークを外すことはせず、そのまま殿堂に展示しておく予定だという。記者が投票を行なった時点では、アロマーは殿堂にふさわしい選手だったいうのがその理由だ。また、アロマーを除外する場合、19世紀に活躍したキャップ・アンソンのように明白な人種差別主義者だったような選手らも同様に扱わないと整合性を欠く。殿堂としては、そういった声が上がることを避けたいのだろう。

 とはいえ、殿堂入りした後であっても、アロマーが犯した行為が事実なら、それは許されることではない。殿堂を訪れた人は、他の"潔白"な殿堂選手とともに並んでいるアロマーのプラークを見てどう思うだろうか。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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