プロ野球

根尾昂のプロ初ホームランを呼び込んだ「空白の5日間」。首脳陣の我慢が打撃向上のきっかけに<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2021.05.04

プロ通算105打席目で初ホームランを満塁弾で飾り、ドラゴンズファンを歓喜させた根尾。写真:滝川敏之

 中日の根尾昂が5月4日のDeNA戦でうれしいプロ初ホームランを放った。

 3回裏、広いバンテリンドームの右中間スタンドに飛び込んだ一発は、試合を実況していたアナウンサーによれば推定飛距離125メートルのグランドスラム。プロ1号を満塁本塁打で飾ったのは、球団日本人選手では杉下茂以来71年ぶりとのことで、やはりスターになるべくして生まれた選手だと思わずにはいられない。声を出しての応援が禁止されてるはずのドームに大歓声が鳴り響いていたが、根尾に寄せるドラゴンズファンの期待の大きさを考えれば無理もないだろう。

 プロ3年目、36試合目でようやく飛び出した本塁打。実は、この一発を呼び込んだのは「空白の5日間」だった。

 今季、初の開幕スタメンを勝ち取った根尾だが、随所に光る場面はあったものの4月21日時点では打率.132。ファームに落とされても仕方のない成績だったが、与田剛監督は代わりに22日から5日間先発から外し、その間、打撃コーチとみっちり練習を積ませることを選んだ。
 
 成果はすぐに出た。27日の阪神戦で6日ぶりにスタメン復帰を果たすと、今季初のマルチ安打。そこから今日までの7試合は21打数7安打、打率.333と明らかに打撃の調子は上向いている。しかも、7安打のうち4本が長打。今日の一発、そして5月3日に放ったプロ初の三塁打を含め、引っ張り方向にいい打球が打てるようになったのも、以前にはなかった傾向だ。

 今日の試合後、栗原健太打撃コーチは「練習の時から強いスウィングを意識させてきた」という趣旨のコメントを残している。確かに、結果が出ない時期でもこつこつ当てにいくのではなく、思い切りのいいフルスウィングはできていた。

 一軍で辛抱強く場数を踏ませてきたことが今日につながったという意味では、根尾自身はもちろん、与田監督含め首脳陣の我慢がもたらした一発と言ってもいいかもしれない。

 まだまだ課題は多い。だが、前夜に失策と牽制死で敗因の要因を作ってしまった高松渡もそうだが、手痛い失敗を明日の糧にできるのが若い選手の魅力。根尾にはこれからも三振を恐れず、フルスウィングを貫徹しながら高みを目指してもらいたい。

構成●SLUGGER編集部
NEXT
PAGE
【動画】ようやく出た根尾昂のプロ初ホームラン!バンテリンドームに詰めかけた竜党大歓喜