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MLB

開幕約1か月半で早くも5度の大記録達成。MLBでノーヒッターが量産される「2つの理由」は?<SLUGGER>

出野哲也

2021.05.19

マスグローブ(左上)、ロドン(右上)、ミーンズ(左下)にマイリー(右下)……。1か月半足らずの間にノーヒッターが達成された理由とは?(C)Getty Images

マスグローブ(左上)、ロドン(右上)、ミーンズ(左下)にマイリー(右下)……。1か月半足らずの間にノーヒッターが達成された理由とは?(C)Getty Images

 今年のメジャーリーグでは、例年にないペースでノーヒッターゲームが生まれている。4月9日、ジョー・マズグローブがパドレス史上初の快挙を成し遂げたのを皮切りに、14日にカルロス・ロドン(ホワイトソックス)、5月5日はジョン・ミーンズ(オリオールズ)、そして7日にはウェイド・マイリー(レッズ)が達成。そして現地時間5月18日にスペンサー・ターンブル(タイガース)も名を連ね、開幕から1か月半で5人が達成する事態となった。
【動画】マリナーズを完璧にシャットアウト! タイガース右腕ターンブルのノーヒッター達成の瞬間はこちら

 このほか公式記録にはカウントされていないが、4月25日にもマディソン・バムガーナー(ダイヤモンドバックス)が7イニング制のゲームを無安打に抑えている。19年も年間で4人が達成していたが、今年はすでにその数に並び、近代メジャー(1901年以降)の最多記録である7回(90、91、2012年)にとどまらず、史上最多の8回(1884年)を更新する可能性すら囁かれている。
 
 ノーヒッターは運に左右される要素も大きく、これほど短期間に集中して達成されたのは、“たまたま”とも言える。さらにメジャーでは、守備シフトを敷かれても空いたエリアに打とうとする打者が少ないという事実があるように、「ヒット狙いで打ち方を変えるより、自分のスウイングをする」という思考が基本だ。そのためノーヒッターの発生回数は、もともと日本より多い傾向がある(過去10年で日本では9回、メジャーでは37回)。

 だが、今季は達成されやすい環境が、以前よりも整っている。まず、要因として挙げられるのは、“飛ばないボール”の導入だ。

 MLBの公式発表によれば「打球の飛距離114.3メートル以上につき30~60センチほど飛ばなくなる」とされていて、4月終了時点での本塁打数は19年の1010本から873本と約14%減少した。特に影響を受けているのは、打球角度が30度未満の飛球だとデータサイト『Fangraphs』は分析する。この種の打球は、19年には65%の確率で出塁につながっていたのが、今季は54%までに下降したという。

 減っているのは本塁打だけでなく、二塁打も同じ。飛距離だけが原因でなく、データの浸透で外野手のポジショニングが改良された結果だとの見方もあるが、4月のBABIP(インプレー打率).284もここ30年では最低だった。また、ブレイク・スネル(パドレス)は新しいボールについて「縫い目が高くなって、変化球が投げやすくなった」と証言しており、投手は二重の恩恵を被っているようだ。
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