プロ野球

佐藤輝明の打撃スタイルをデータで解明!実は『ドカベン』の岩鬼にそっくり!?<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2021.06.09

歴戦の強打者たちにパワーで引けを取らない秘密は、豪快なフルスウィングと巧みな変化球打ちにあり?写真:山手琢也

 開幕から快進撃を続けるルーキー、佐藤輝明(阪神)の"個性"が、開幕から2か月が経過して、ある程度見えてきた。ここでは、佐藤の打者としての傾向をデータで検証してみよう。

 新人離れしたペースで本塁打を量産できる理由は、積極的にガンガン振っていくスタイルにある。ストレートであろうと変化球であろうと、とにかく初球からフルスウィング。その結果、ストレートのスウィング率、変化球のスウィング率、そしてファーストストライクのスウィング率など、ほとんどのスウィング系指標が両リーグでトップクラスの数値になっているのだ。

 三振(これも両リーグ1位)を恐れぬマン振りスタイルは、スモールベースボールを重んじる日本、特にセ・リーグでは珍しい。むしろフライボール革命全盛のメジャーの打者のようだが、実際にフライ打球の割合67.2%は、両リーグの規定打席到達者の中で最も高い。2位の山田哲人(ヤクルト)と比べても10%近く上回っており、他の日本人打者とはそもそもスウィングや打球への意識からしてまるで違うことが分かる。

 また、ドラフト直前には「素材型」とも言われていたが、春季キャンプの段階で本人が「変化球に合わせる能力には自信がある」と語っていた通り、新人選手が苦戦する傾向の高い変化球にも対応している。対変化球打率.306はリーグ3位で、これは鈴木誠也(広島)よりも高い。一般的に打者はストレートよりも変化球を苦手にするものだが、佐藤はむしろ変化球の方が打率が高く(ストレートは.218)、打っている本塁打も多い。
 
 また、ストレートに対する打率が低いからと言って、決してプロレベルの直球に苦戦しているわけではない。というのも、球速が150キロを超えると、なぜか打率が.263まで上昇するからだ。5月28日の西武戦で放った1試合3本塁打の締めくくりも、ギャレットの154キロをメットライフドームの右中間席上段まで運んだものだった。

 とはいえ、長所の裏には明確な短所も見えてくる。度の過ぎた積極性でストライクゾーンを外れるボールでもどんどん振っていくため、ボールゾーンスウィング率41.8%は両リーグワースト。いわゆるフリースウィンガーで、四球はほとんど選ばない。

 柳田悠岐(ソフトバンク)や吉田正尚(オリックス)のように、フルスウィングしつつも確実に当てるような技術はまだないので、空振りも両リーグで最も多い。それが三振の多さにつながっており、打席アプローチの優秀さを示すBB/K(四球÷三振)0.17は、両リーグでもっとも悪い数字になっている(ちなみに両リーグ圧倒的1位の吉田がBB/K2.42だ)。打席での辛抱強さが、まずは一番の課題だといえるだろう。難しい球を打つ技術はあるのだから、待ちさえすれば本塁打にできるボールはまだまだ増えるはずだ。

 確実性には欠けるが難しいボールを得意とする点は、マンガ『ドカベン』の岩鬼正美を彷彿とさせる(現在は外野を守ることが多いが、本来佐藤は岩鬼と同じ三塁手だ)。佐藤も岩鬼のようにスケールが大きく、夢がある打者なのは間違いない。豪快な打撃でたくさんのアーチを架ける"和製大砲"として、今後も我々を大いに沸かせてくれそうだ。

構成●SLUGGER編集部
※データ提供:データスタジアム(株)

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