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MLB

世界一ドジャースは組織ぐるみで関与?MLBを揺るがす“不正投球”問題の本質【前編】<SLUGGER> 

出野哲也

2021.06.08

『SI』紙の記事を受けてダルビッシュ(右)もMLBの投手の“不正投球”の蔓延を暴露。その告発内容にはバウアー(左)も該当するが……?(C)Getty Images

『SI』紙の記事を受けてダルビッシュ(右)もMLBの投手の“不正投球”の蔓延を暴露。その告発内容にはバウアー(左)も該当するが……?(C)Getty Images

「松ヤニは使ったことないです。 自分の過去数年の回転数はほぼ変わっていません。 問題とされているのは急に回転数が数百も上がっている人たちです」

 これは、ファンからの疑問に答える形でダルビッシュ有(パドレス)がツイートした内容である。彼はこのようにも言っている。「ただ松ヤニをつけるだけでは回転数とかに変化はほとんど出ません。 最近使っている人が増えているのは色々な物質を混ぜているもので、それならすぐに回転数を増やすことができるみたいです。短期間で急に何百回転も増えている人はアウトと考えてもいいと思います」

 ダルビッシュが言及しているのは『スポーツ・イラストレイテッド(SI)』誌電子版が発表した、MLBで蔓延している“不正投球”についての告発記事のことだ。記事では、多くの投手がボールに異物を付着させて投げている実態を暴露している。最近引退したばかりのある投手は「全体で80~90%の投手が“スティッキー・スタッフ”を使用している」と証言。スティッキー、すなわち粘着性の物質をボールに塗りつけて投げることで回転数を増加させ、通常ではあり得ない変化を生み出している――というのだ。

 別の投手は、自分は投球感覚が狂うから使っていないとした上で、投手コーチから試してみないかと唆されたと明かす。回転数だけでなく、指がしっかりかかって制球しやすいのでより力一杯投げられ、球威の増加につながるとの指摘もある。なお、ダルビッシュの過去5年間の4シームの回転数は2505→2543→2529→2595→2561と一定で、疑惑は完全に晴れている。
 

 一般的な「スティッキー・スタッフ」は、松ヤニに日焼け止めなどの物質を混ぜたものだが、他にも打者が使うバットの滑り止めに「改良」を加えたり、ドラマーやサーファーなど他業種用の製品を試したり、中には自作に走る者までいるとされる。投球時の隠し場所としては、ベルトやグラブの指と指の間、キャップの庇などが用いられているようだ。

 滑り止めの目的でロジンバッグ以外の物質を使うのは、明白なルール違反だ。だが、MLBの公式球は非常に滑りやすいことで知られる。ダルビッシュは「なぜ日本では滑り止めは使われないのに、MLBでは使われるのか? ボールに問題があるってMLBはわかってんのにお金のためかずっと滑りまくるボールを提供してくる。 わかってるんやからそっちを先にどうにかしましょう」(6月5日付のツイッターより)と不満を隠さない。

 近年のMLBはピッチングの進化が著しい。それはスタットキャストやラプソードなど最新テクノロジーの導入によって詳細なデータが得られ、同時に『ドライブライン・ベースボール』のような最先端のトレーニング施設で効果的な鍛錬が実現したからだ――というのがこれまでの理解だった。そのこと自体は間違いではないだろう。
 
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