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MLB機構に怒り心頭! 滑り止め新ルールの“被害者”になったレイズ豪腕が吐露「僕の怪我につながった」

SLUGGER編集部

2021.06.16

批判が殺到するMLBの滑り止め使用禁止問題。豪腕グラスノーは違う投げ方をしたがゆえに、故障につながったと指摘する。(C)Getty Images

批判が殺到するMLBの滑り止め使用禁止問題。豪腕グラスノーは違う投げ方をしたがゆえに、故障につながったと指摘する。(C)Getty Images

 メジャーリーグは6月に入り、ある話題がもちきりになっている。不正投球問題だ。

 米誌『スポーツ・イラストレイテッド』による告発に端を発したこの一件、簡単に言えば、投手が異物をボールに付着させて故意に回転数を上昇させていることが明らかになった。そしてMLB機構は現地時間6月15日、ロージン以外のすべての滑り止めの使用禁止すを通達。違反者には出場停止処分が科せられるなど、厳しい新ルールを導入するに至っている。

 これに異を唱える者は後を絶たない。そして早速、このルールの“被害者”が出てしまった。タンパベイ・レイズはタイラー・グラスノーが右ヒジ靱帯を一部損傷したことを発表。トミー・ジョン手術は回避する方向であるが、シーズン終盤までの離脱が決定的となったのだ。

 グラスノーは今季14先発して5勝2敗、防御率2.66、奪三振率12.58をマーク。球界屈指の豪腕は故障について報告した会見で、MLB機構に怒りをぶちまけた。その理由は他でもない。滑り止めに使う粘着性物質使用の取り締まりについてである。

 グラスノーはまず、「僕は以前、“スティッキー・スタッフ”(粘着性物質)を使ったことがある」と正直に告白。日焼け止めクリームとロージンを混ぜたもので、回転数を上げるのではなくグリップ力を高めるために使っていたという。

 規制強化の流れもあって8日のワシントン・ナショナルズ戦から「何も使わずに投げた。良い投球だったと思う」と、納得の7回1失点11奪三振の好投を見せたが、「翌日起きたら、身体に痛みがあった」。
 
 そして、次の14日シカゴ・ホワイトソックス戦の4回に右ヒジに異変が起きて降板。「まったく違う感じがしたんだ。速球とカーブの握り方を変えた。何十年間も同じやり方で投げてきたのに……」と、普段と異なる投げ方によってヒジへのストレスのかかり方が変わったという。グラスノーは続ける。

「ここまで80イニングほど投げてきた。それがシーズン途中でいきなり、今まで使ってきたものがダメと言われたんだよ? すべてを変えなければいけないんだ。これまでのやり方はすべて捨て去ってね、まったく新しいことを一からしなきゃなんて」。だからこそ長身右腕はこう断言する。「僕の怪我につながったと100%確信している。疑う余地はないよ」

 グラスノーはこうした問題が今後も起きるのではないかとも指摘。「投手はボールをコントロールやしっかり握るために、何かしらのものが必要なんだ。MLBが理解してくれなくて、マジでイライラする。他の選手にも僕と同じことが起きてほしくない。直球がすっぽ抜けて打者の顔に当たるようなことは避けたい」と、打者にとっても故障のリスクが増える可能性も示唆した。

「(MLBが)積極的なアプローチを取る必要があるのは理解している。だけど、やり方が間違っている。本当に不満だ。解決策を見つけないといけないと思うよ。何も使ってはいけないなんてクレイジーさ。

すべてMLBの責任だと言うつもりはない。全員に対してフェアにしようとすることは理解している。だけど、(取り締まりをするなら)オフに選手たちにアジャストする機会を与えてくれないと。シーズン途中にいきなり何も使えないと言われ、ずっと行ってきたことを変える必要があった。だから僕は怪我したんだと思う」

 滑り止めに関する問題は、古くからのグレーゾーンではあった。ボールに傷を付けるなどの行為と異なり、MLBの滑りやすいボールを投手が“握りやすく”することは打者にもメリットがあったことから、問題視されることはなかった。

 しかし、回転数を増す行為は明らかな「逸脱行為」。この境界線をはっきりさせようというMLBの意図は理解ができる。一方でグラスノーらが言うように、シーズン途中の急な取り決め、その内容も含めては、かなり強引な面も垣間見えたが……。

構成●SLUGGER編集部

【動画】“何も使わずに”11奪三振のグラスノー。この数日後に異変が…
 
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