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プロ野球

「勝負所の4回」に動いたソフトバンクと動かなかった巨人。明暗を分けた両指揮官の決断と思惑【日本シリーズを読み解く/第3戦】

氏原英明

2019.10.23

原監督がルーキーの戸郷にマウンドを任せたのは、明確な理由があった。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

原監督がルーキーの戸郷にマウンドを任せたのは、明確な理由があった。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 指揮官同士の鍔迫り合い。
 2−2の同点で迎えた4回表の攻防をみながら、試合の趨勢がどちらに転ぶかを注視していた。

 ソフトバンクが先制を許す展開となった日本シリーズ第3戦は、ソフトバンクがすぐさま追いついき、突き放して、同点にされるという中で4回を迎えていた。

 巨人のマウンドには3番手の戸郷翔征が立っていた。

 戸郷は高卒1年目のイキのいい投手だ。高校3年秋、U18日本代表がアジア選手権を宮崎で戦うことになり、その大会前の壮行試合で練習相手になった宮崎県選抜の一員として9奪三振をあげて株をあげた。プロに入ってもその勢いを持続し、ルーキーイヤーの今季、デビューを飾っている。

 ストレートとカットボールのコンビネーションで勝負するパワーピッチャーだが、4回の先頭・松田宣浩を空振り三振に切って快調にスタート。しかし、続く内川聖一に外のカットボールを左翼前に運ばれ、その刹那、持ち味を失った。
 
 8番・甲斐拓也に四球を与えると、9番・投手のバンデンハークの送りバントを処理した戸郷は三塁へと投げたが、これが悪送球となり、1死・満塁となったのである。
 
 ここで動いたのが、ソフトバンクベンチだった。
 1番の川島慶三に変えて、代打の切り札・長谷川勇也を送ったのだ。

 試合はまだ4回という早めの代打策だが、「経験があるから」と工藤公康監督に迷いはなかったという。それだけ、勝負所であると臭ったのだろう。

 一方、巨人ベンチは動かなかった。
 高卒ルーキーに、この窮地の場面を任せたのだった。

 長谷川は戸郷の初球、ストレートが高めに浮いたのを狙い撃って左翼犠牲フライ。1点を勝ち越した。

 そして、ここでも巨人ベンチは動かなかった。

 続く今宮はボテボテの三塁ゴロだったが、これが内野安打となって、また満塁。3番の柳田悠岐と勝負したが、1球もストライクが入らず押し出し四球。続くデスパイネには左翼への2点適時打を打たれて計4失点。試合は大きく動いたのだった。巨人・原辰徳監督は、ここで戸郷を諦めた。
 

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