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登板投手のボールを審判がチェック、“共犯”の野手に処分も…MLB不正投球取り締まりの新ルールとは?<SLUGGER>

宇根夏樹

2021.06.21

新ルールによって、ロジンバッグ以外の異物付着の有無を審判が必ず調べることが定められた。(C)Getty Images

新ルールによって、ロジンバッグ以外の異物付着の有無を審判が必ず調べることが定められた。(C)Getty Images

 投手がボールに異物を付着させることに対する新たなルールが、6月21日から施行される。これまでも禁止されていたが、それを厳しく取り締まるのが、今回の新ルールだ。

 現状で「不正投球」と「滑り止め」を分ける境界線は明確とは言い難く、シーズン途中に新たなルールをスタートさせることには批判も少なくない。今回の措置によって投手が故障に見舞われたり、投球時に滑ったボールが打者に当たる場面が増加も懸念される。

 ただ、賛否はともかく、新ルールはそこに存在する。まずは、その内容を知っておくべきだろう。定められているのは、10試合の出場停止処分だけではない。いくつかのポイントを紹介しよう。

●先発登板した投手は、1登板につき1度以上、異物付着の有無を審判にチェックされる。リリーフ投手へのチェックは、イニング終了時か降板時のいずれか。イニングをまたいで投げる場合は、最初のイニングが終わった時点になる。また、試合の進行を妨げて遅らせることがないよう、イニングの間と投手の交代時がチェックの時間となる。
 
●審判のチェックでボールに異物を付着していると判断された投手は、即座に退場となり、10試合の出場停止処分を科される。捕手をはじめとする野手が「共犯者」として異物を付着させていることが発覚した場合は、投手だけでなくその野手も処分を受ける。

●従来どおり、滑り止めのロジンバッグは使用できる。ただし、ロジン以外の物質を混ぜることはできない。ちなみに、ボールに付着させてもいいということではないが、日焼け止めはすべての試合で使用禁止というわけではない。禁じられるのは、ナイトゲームの日没後(どの時点でどうやってそう判断するのかは不明)と球場の屋根が閉じている試合だ。

●異物付着が見つかって出場停止を科されても、その間の給料は球団から選手に支払われる。一方で、球団は出場停止中の選手に代わる選手をロースターに補充することはできない。1人が出場停止になれば、その間に行われる試合は通常より1人少ない25人で戦わなければならない。これは、禁止薬物使用に対する罰則とは異なる。球団のデメリットを増すことで、組織ぐるみの異物使用を防ぐことが狙いだ。

 なお、MLB機構はこのルールについて、その効果と選手の健康を注意深く観察し、今後さらに改良・修正を加える可能性もある、としている。こちらも否定的に捉えれば、見切り発車だと認めているようにも聞こえるが……。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。


 
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