投手がボールに異物を付着させることに対する新たなルールが、6月21日から施行される。これまでも禁止されていたが、それを厳しく取り締まるのが、今回の新ルールだ。
現状で「不正投球」と「滑り止め」を分ける境界線は明確とは言い難く、シーズン途中に新たなルールをスタートさせることには批判も少なくない。今回の措置によって投手が故障に見舞われたり、投球時に滑ったボールが打者に当たる場面が増加も懸念される。
ただ、賛否はともかく、新ルールはそこに存在する。まずは、その内容を知っておくべきだろう。定められているのは、10試合の出場停止処分だけではない。いくつかのポイントを紹介しよう。
●先発登板した投手は、1登板につき1度以上、異物付着の有無を審判にチェックされる。リリーフ投手へのチェックは、イニング終了時か降板時のいずれか。イニングをまたいで投げる場合は、最初のイニングが終わった時点になる。また、試合の進行を妨げて遅らせることがないよう、イニングの間と投手の交代時がチェックの時間となる。
●審判のチェックでボールに異物を付着していると判断された投手は、即座に退場となり、10試合の出場停止処分を科される。捕手をはじめとする野手が「共犯者」として異物を付着させていることが発覚した場合は、投手だけでなくその野手も処分を受ける。
●従来どおり、滑り止めのロジンバッグは使用できる。ただし、ロジン以外の物質を混ぜることはできない。ちなみに、ボールに付着させてもいいということではないが、日焼け止めはすべての試合で使用禁止というわけではない。禁じられるのは、ナイトゲームの日没後(どの時点でどうやってそう判断するのかは不明)と球場の屋根が閉じている試合だ。
●異物付着が見つかって出場停止を科されても、その間の給料は球団から選手に支払われる。一方で、球団は出場停止中の選手に代わる選手をロースターに補充することはできない。1人が出場停止になれば、その間に行われる試合は通常より1人少ない25人で戦わなければならない。これは、禁止薬物使用に対する罰則とは異なる。球団のデメリットを増すことで、組織ぐるみの異物使用を防ぐことが狙いだ。
なお、MLB機構はこのルールについて、その効果と選手の健康を注意深く観察し、今後さらに改良・修正を加える可能性もある、としている。こちらも否定的に捉えれば、見切り発車だと認めているようにも聞こえるが……。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
現状で「不正投球」と「滑り止め」を分ける境界線は明確とは言い難く、シーズン途中に新たなルールをスタートさせることには批判も少なくない。今回の措置によって投手が故障に見舞われたり、投球時に滑ったボールが打者に当たる場面が増加も懸念される。
ただ、賛否はともかく、新ルールはそこに存在する。まずは、その内容を知っておくべきだろう。定められているのは、10試合の出場停止処分だけではない。いくつかのポイントを紹介しよう。
●先発登板した投手は、1登板につき1度以上、異物付着の有無を審判にチェックされる。リリーフ投手へのチェックは、イニング終了時か降板時のいずれか。イニングをまたいで投げる場合は、最初のイニングが終わった時点になる。また、試合の進行を妨げて遅らせることがないよう、イニングの間と投手の交代時がチェックの時間となる。
●審判のチェックでボールに異物を付着していると判断された投手は、即座に退場となり、10試合の出場停止処分を科される。捕手をはじめとする野手が「共犯者」として異物を付着させていることが発覚した場合は、投手だけでなくその野手も処分を受ける。
●従来どおり、滑り止めのロジンバッグは使用できる。ただし、ロジン以外の物質を混ぜることはできない。ちなみに、ボールに付着させてもいいということではないが、日焼け止めはすべての試合で使用禁止というわけではない。禁じられるのは、ナイトゲームの日没後(どの時点でどうやってそう判断するのかは不明)と球場の屋根が閉じている試合だ。
●異物付着が見つかって出場停止を科されても、その間の給料は球団から選手に支払われる。一方で、球団は出場停止中の選手に代わる選手をロースターに補充することはできない。1人が出場停止になれば、その間に行われる試合は通常より1人少ない25人で戦わなければならない。これは、禁止薬物使用に対する罰則とは異なる。球団のデメリットを増すことで、組織ぐるみの異物使用を防ぐことが狙いだ。
なお、MLB機構はこのルールについて、その効果と選手の健康を注意深く観察し、今後さらに改良・修正を加える可能性もある、としている。こちらも否定的に捉えれば、見切り発車だと認めているようにも聞こえるが……。
文●宇根夏樹
【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。