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MLB

大谷翔平はまだ独走じゃない!? 日本人メジャーリーガー初の本塁打王獲得の「可能性」を考える<SLUGGER>

宇根夏樹

2021.07.07

驚異の本塁打製造機と化した大谷だが、2位のゲレーロJr.との差はそこまで圧倒的ではない。果たしてタイトル獲得の可能性は……(C)Getty Images

驚異の本塁打製造機と化した大谷だが、2位のゲレーロJr.との差はそこまで圧倒的ではない。果たしてタイトル獲得の可能性は……(C)Getty Images

 ご存じのとおり、大谷翔平(エンジェルス)がホームランを量産している。7月2日の2打席連続アーチにより、両リーグで最も速くシーズン30本塁打に到達した。

 この試合は、エンジェルスのシーズン81試合目。残りの81試合も同じ本数を記録すれば、年間で60本となる。シーズン60本塁打以上は、1927年のベーブ・ルース(60本)をはじめ、延べ8人しか記録していない偉業だ。さらに20世紀終盤から21世紀初頭にかけての“ステロイド時代”を除くと、ルースと61年に61本を記録したロジャー・マリスの2人だけとなる。

 もっとも、大谷が本塁打王を獲得できるかどうかは、まだ分からない。リーグ2位(両リーグでも2位)のブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)との差は、7月6日の時点で3本(31本と28本)。一時、大谷がゲレーロJr.に5本差をつけられていたのを思えば、今の差はまだ十分に挽回可能な範囲。まして一部の日本メディアのように「独走」と表現するのは早すぎるだろう。

 一方、大谷の本塁打王獲得を後押しする要素がもうすぐ加わる。5月半ばから故障者リストに入っているマイク・トラウトが後半戦の開始早々、あるいは8月初旬に戻ってくる予定なのだ。

 離脱するまで、トラウトは大谷のすぐ後ろの3番に座っていた。その主砲がいなくなってから大谷への四球率は急激に上がり、7月3日には1試合に2度も申告敬遠で歩かされた。だが、「良き相棒」が戻ってくれば、相手も大谷との勝負を簡単に避けるわけにはいかなくなる。
 
 ただ、疲労の蓄積も懸念される。他の選手と違い、大谷は投手としても出場しているからだ。今シーズンの登板は、2018年の10試合をすでに2試合上回っている。日本ハム時代の16年には、20試合以上に登板しながら二刀流として活躍したから「大丈夫だ」と思われるかもしれないが、メジャーは試合数が多く、かつ日程も過密だ。

 大谷自身が望むとは思えないが、今後は定期的に休養日を設ける方が調子を維持できるかもしれない。ちなみに、ルースが二刀流選手として活躍したのは1918~19年のたった2シーズンしかない。これはルースが疲労によって二刀流を続けることを嫌がったためである。

 なお、MLBで打撃三冠のタイトルを手にした日本人選手は、01年と04年に首位打者に輝いたイチローだけ(01年は盗塁王も獲得)。本塁打に関しては、リーグトップ10に入った選手すらいない。大谷が本当に本塁打王を手にすれば、日本人2人目の打撃三冠タイトル獲得という以上の歴史的意義がある。今後も調子を落とすことなく、アーチを架け続けてもらいたい。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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