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MLB14球団を渡り歩いた後、アメリカ代表で金メダルを目指す“究極のジャーニーマン”【東京五輪】

SLUGGER編集部

2021.08.02

代表では中継ぎを務めるジャクソン。日本戦でも登板があるかもしれない。写真:藤岡雅樹

 MLB史上最多14球団を渡り歩いた37歳のジャーニーマンが、今度はアメリカ代表のユニホームを着て金メダルを目指している。7月31日のオープニングラウンド韓国戦で、3番手として登板したエドウィン・ジャクソンだ。

 この日、0.2回を無失点に抑えて勝利に貢献したジャクソンの数奇なキャリアは、米紙『New York Times』でも特集記事が組まれるなど改めて注目を集めている。

 2005年、20歳の時にドジャースの未来のエース候補としてメジャー初登板を果たしたジャクソンは、いきなりあのランディ・ジョンソンに投げ勝つ鮮烈デビューを飾る。その後も先発投手として一定の成績は残したが、昇格時の期待に十分応えたとはいえず、いつしかジャーニーマンとなって毎年のように違うチームを渡り歩くようになった。17年間で実に14球団でプレーし、これはMLB史上最多。5度の解雇も経験した。
 あまりにも目まぐるしい球歴に、本人も在籍したチームの順番を正確には覚えていないほどだが、それほどまでに移籍を繰り返したのは常に需要があったからでもある。10年にノーヒッターを達成、11年にはワールドチャンピオンにも輝き、通算107勝を挙げた。

 ジャクソンの生い立ちを振り返ると、最初から流浪の旅を送ることが運命づけられていたのではないかと思えてくる。1983年、陸軍にいた父が駐留していた西ドイツ(当時)のノイウルムで生まれ、1歳の時に一度アメリカに戻ったが、その後再びドイツで2年間過ごすなど、幼い時から常に旅と隣り合わせの人生だった。

 実は、ジャクソンの妻も空軍の退役軍人。19年を最後にメジャーリーグから遠ざかっていたが、その妻から「一生の一度のチャンス。参加しなかったら絶対に後悔する」と強烈な後押しを受けて、アメリカ代表入りを決めたという。父、妻とは別の形で国のために戦うことになった。本人は金メダル獲得が「最高のエンディング」になると意気込んでいる。

 大物メジャーリーガーは一人もいない今回のアメリカ代表だが、冬季オリンピックで銅メダルを獲得した元スケート選手のエディ・アルバレスを含め、"寄せ集め軍団"ならではの魅力がある。こういうチームは、侍ジャパンにとっても意外に難敵かもしれない。

構成●SLUGGER編集部