盗塁阻止は投手と捕手の共同作業だ。データによれば、盗塁を防げるかどうかは投手に7割ほどの責任があるとも指摘されている。しかし、捕手から圧倒的なバズーカ送球で刺されるシーンは相当にインパクトがあるし、当然、無警戒というわけにもいかない。これで相手走者のリードが小さくなれば、その分、投手陣はより打者へ集中する環境が整うわけで、抑える可能性も必然的に高くなってくる。
いつ来るか分からない。だから仕掛けられない。結局、甲斐キャノンがオリンピックでお目見えすることはなかった。しかし、出なかったという事実が、何よりもその価値を物語っていた。
野村氏は生前、「君につけてほしい」として、ホークスでは野村氏以降の捕手が一人もつけてこなった背番号19を甲斐に禅譲した。その想いに答えるように、育成でプロ入りした男は球界を代表する名捕手へと成長を続けた。そして、37年間オリンピックで金メダルを獲得できなかった日本を、「優勝チーム」へと変えたのだ。
文●新井裕貴(THE DIGEST編集部)
【PHOTO】全勝で金メダル!侍ジャパンの激闘をベストショットで一挙公開!