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侍ジャパン

「小技とパワーのハイブリッド」侍ジャパンは“新しい日本の戦い方”を見せた【橋上秀樹が語る侍ジャパン金メダルの要因】

THE DIGEST編集部

2021.08.12

橋上氏がスウイングを絶賛した村上は、決勝のアメリカ戦で先制弾を放っている。(C)Getty Images

橋上氏がスウイングを絶賛した村上は、決勝のアメリカ戦で先制弾を放っている。(C)Getty Images

 この東京五輪で、1984年のロサンゼルス五輪以来(公開競技)となる金メダルを獲得した野球日本代表。果たしてその勝因はどこにあったのか。楽天のヘッドコーチなどを歴任し、2013年のWBCでは侍ジャパンの戦略コーチを務めた橋上秀樹氏が解説してくれた。

 橋上氏がコーチを務めた第3回WBCで、それまで大会2連覇を果たしていた日本は準決勝敗退という結果に終わった。この時の反省を、「日本人らしい慎重すぎる面が出た」と振り返る。一発勝負の国際試合で、いざという時に「思い切りの良さ」が出せなかったのだ。

 このことは敗退の要因となった準決勝対プエルトリコ戦での、8回のダブルスティール失敗にも表れている。この時のベンチからのサインは「仕掛けろ」ではなく、「行けたら行け」という曖昧なものだった。

 それに対して、今大会では勝負どころで場面に応じた積極的な攻撃ができていた。たとえば準々決勝のアメリカ戦、延長10回の攻撃で栗原陵矢(ソフトバンク)が初球から送りバント、続く甲斐拓也(ソフトバンク)も初球攻撃でサヨナラタイムリーを放ったように、「勝負どころの終盤で積極的に仕掛けるなど、慎重さのなかにも大胆さを多く出せたのが今大会だった」と橋上氏は語る。

 さらに、このようなスタイルの進化は、もっと大きな面でも現れていた。これまでの日本は「パワーで外国人選手に劣っていた」(橋上氏)ため、バントや進塁打といった小技を駆使し、1点を取りに行くのスモール・ベースボールを標榜していた。だが、この戦術は裏を返せば爆発力に欠けるというデメリットもある。追う展開の多かった今大会でそればかりに固執していたら、落としていた試合があったかもしれない。
 
 だが、今大会の侍ジャパンはスモール・ベースボールにとどまらなかった。

 もちろん場面に応じて小技を使う場面はあったが、強く振ることをしっかり意識して長打で得点するシーンも目についた。橋上氏によれば、「特に山田哲人や村上宗隆(ともにヤクルト)、吉田正尚(オリックス)などの打球の強さ、空振りした時のスウィングの迫力には目を見張るものがあった」という。これが「スモールベースボールの良いところは継承しながらも、パワーも兼ね備えた野球」としたと指摘する。

「今大会の侍ジャパンの戦いは、スモールベースボールとパワー&スピードが高いレベルでハイブリッドになっていました。特にパワーに関しては、全体のレベルが上がっていると感じました」

 これまでのスタイルをさらに進化させ、37年ぶりの金メダルという最高の結果を手にした侍ジャパン。今後の国際大会でも好結果も期待できるような、まさに鮮やかな勝利だったと言えるだろう。

解説●橋上秀樹

【プロフィール】
はしがみひでき/1965年生まれ。安田学園高から83年ドラフト3位でヤクルトに入団し、守備固めや代打の切り札として活躍した。97年からは日本ハム、2000年には阪神へ移籍し、同年引退。その後は解説者を経て、楽天、巨人、西武、ヤクルトでコーチを歴任し、13年の第3回WBCでは侍ジャパンの戦略コーチも務めた。現在はBCリーグの新潟アルビレックスの監督を務める。

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