まさに"真夏の夜の夢"だった。

　８月12日（現地時間）、映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となったアイオワ州ダイアーズビルに作られた特設球場でホワイトソックス対ヤンキースの公式戦が行なわれた。

　1989年に公開された『フィールド・オブ・ドリームス』は、アイオワの農夫が「If you build it, he will come（それを作れば、彼は来る）」との声に導かれてトウモロコシ畑の中に野球場を作ると、1918年のワールドシリーズで八百長を働いて球界から追放されたホワイトソックスの選手たちがトウモロコシ畑から現れて……というストーリー。ファンタジー色の濃い作品だが、親子の絆を描いた野球映画屈指の名作として、今も語り継がれている。

　映画の撮影で使用された球場はその後も保存され、観光地として人気を博してきたが、今回はその隣に新たに公式戦用の球場を建設した。本来は昨年開催されるはずだったが、コロナ禍で中止。収容人員が8000人足らずということもあり、チケットはプラチナ化していた。
  　そして迎えた今日、試合前のセレモニーから心憎い演出がファンを盛り上げた。まず、映画に主演したケビン・コスナーが、続いてホワイトソックスとヤンキースの選手が、映画と同じようにトウモロコシ畑からゆっくり登場した。両軍のユニフォームは、1900年代初頭に使用されていたものをモチーフにした復刻版。映画とほとんど同じ世界が再現され、この時点ですでに涙腺が崩壊したファンも少なくなかったはずだ。

　その後、コスナーはマウンド後方で、両軍の選手たちを背にして「30年以上前、あのトウモロコシ畑の向こう側で、時の試練に耐えうる映画を撮影しました。あのささやかな映画がずっと影響力を保ち続けているおかげで、今夜私たちはここに戻ってくることができました」とスピーチした。

　穏やかな夏の夕景色の中、トウモロコシ畑に囲まれた美しい球場でゲームがスタートする。両軍の選手がトウモロコシ畑に打ち込んでやろうと勇んだ結果か、試合は派手な打撃戦となった。そして、映画に負けず劣らず夢のようなエンディングが待っていた。