高校野球

「高校2年の夏は一度だけ」甲子園ほろ苦デビューを飾った阿南光・森山暁生に期待する理由<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.17

沖縄尚学に打ち込まれた森山だが、将来性を感じさせる投球だった。写真:滝川敏之

 2年生左腕にはほろ苦いデビューとなった。

 8回で179球を投げ、13安打8失点(自責点7)で負け投手。25年ぶりに甲子園出場を果たした阿南光のエース・森山暁生は沖縄尚学打線につかまり、チームは0対8で敗れて1回戦で姿を消した。

「申し訳ない。これまでに味わったことのない言葉で表せない感情が込み上げてきています。沖縄尚学は少しでも甘いところに入ったら打ち返された。どのバッターも、どの場面も隙がなくてすごい打線だった」

 森山はそう言ってうつむいた。

 1回戦で8失点して敗れた無名の左腕・森山にスポットを当てる理由は、この2年生に将来の可能性を感じるからに他ならない。上背182cmから投げ下ろすストレートには力があり、カーブ、ツーシームなど球種も多彩だった。ストレートの最速は135キロ程度だが、磨けば光になる。そんな期待感のある投手だった。

 前身の新野高校や徳島商で春夏計6度甲子園出場があり、この夏限りで勇退する阿南光の中山寿人監督は言う。
 
「森山には高校3年間でまとまるのではなくて、上のことも考えて大きく伸びていってもらいたい。今日の試合はどんな試合展開になっても降板させるつもりはなかった。一球一球が自分の向上するために大切になったと思う。今日の試合を忘れず、良かった点と悔しかった点をより練習して、もっといい投手になってほしい」

 いろんな意味で、経験不足を痛感した初の甲子園の舞台だった。

 試合前からブルペンでの調子はいい方だった。しかし、相手の沖縄尚学とはチーム、個人ともに経験の差が大きかった。

 森山は甲子園大会独特の試合のぺースの速さに圧倒されたと語っている。

「調子は悪くなくて、球も走っていた。でも、甲子園のマウンドに立って緊張していた。試合に入っていく流れの速さについていくことができず。向こうの流れに引っ込まれてしまったのはある」

 初めての甲子園のマウンドは未体験のものばかりだった。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、県外遠征は全面的に中止。市立和歌山や大阪桐蔭、高知などとの対戦予定もあったが、すべて流れた。強豪校との対戦、また、宿泊を伴った遠征でいつもとは異なる体験を得る機会を失ったことは、普通の公立校にはマイナスになったかもしれない。