高校野球

藤浪晋太郎や田中将大ら好投手にも通じる「力強さ」。二松学舎大付・秋山正雲が窮地で見せた“本性”<SLUGGER>

氏原英明

2021.08.21

ピンチの時ほど強く腕を振り、歯を食いしばってストレートを投げ込む。この強気が秋山の持ち味だ。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 8月20日の第103回全国高等学校野球選手権大会、第7日目の第2試合として行なわれた西日本短大付戦に先発した二松学舎大付のエースである秋山正雲は、ピンチでこそ本性を見せる。投げるのはいつもストレート。打てるものなら打ってみろ、と気合を入れるのだ。

「エース番号を背負っているので」と秋山はさらっというが、二松学舎大付にとっては、彼のギアチェンジこそがチームの勝利に直結している。

 市原勝人監督はこう明かす。

「秋山はピンチで少し気持ちが入る。東東京大会からそうなのですが、ピンチを抑えることで、逆に流れがこっちにくる。秋山の踏ん張りが攻撃にいい影響を与えている」
 
 もちろん、甲子園の大舞台においてもそうだった。秋山が西日本短大付の強力打線相手にその本性を見せたのは、初安打を許した6回表のことだった。

 5回までは無安打無得点。完璧な投球を見せていた秋山だが、6回先頭の江口翔人にセンター前ヒットを許す。続く2番・池田翔の送りバントを捕手の鎌田直樹がファンブルして無死一、二塁。3番・林直樹の送りバントの後、4番の三宅海斗に四球を与え、1死満塁のピンチを招いた。

 ここで秋山はギアを上げた。長打力のある5番・山口雄大に対して、初球が142キロの直球。その後も、142、143、138、142。いずれも力のあるストレートを5球連続で投げ込み、見事空振り三振に切って取った。続く6番・穴井秀山もストレートのみの4球で空振り三振。気迫の投球で窮地を乗り切ったのだ。

 そして、指揮官の言葉通り、二松学舎大付には、その裏の攻撃で流れが巡ってくる。先頭の瀬谷大夢がセカンドの悪送球で労せずして二塁まで達すると、4番・関遼輔がここで送りバント。続く5番・浅野雄志がセンター前に弾き返して1点を先制した。さらに、なおも二死二塁の場面で7番・丸山丈司がライト前へのタイムリーで2点目を入れ、一気に均衡を破った。
 
NEXT
PAGE
今はプロで輝く彼らも強気の“本性”があった