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“課題”の速球を打ち返した筒香嘉智。今季第3号のデータが裏付ける「成長の跡」

THE DIGEST編集部

2021.08.25

メジャーでなかなか見せられなかった、速球に対応できる姿を見せた筒香。成長は数字からもうかがい知れる。(C)Getty Images

メジャーでなかなか見せられなかった、速球に対応できる姿を見せた筒香。成長は数字からもうかがい知れる。(C)Getty Images

“ハマの大砲”、“ジャパンの4番”――筒香嘉智がメジャー2年目にして開花の兆しを見せている。

 ピッツバーグ・パイレーツの筒香は現地時間8月23日、本拠地で行なわれたアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦の7回に代打で出場すると、今季3号となる本塁打を右翼席に叩き込み、チームの逆転勝利に貢献した。ここ4試合で3本目のホームラン。自慢のパワーを取り戻しつつあるのは間違いない。

 日本球界を代表するスラッガーは2020年に夢のメジャーへ移籍。強豪タンパベイ・レイズに加入して開幕戦で一発を放つ最高のスタートを切ったが、懸念された「メジャー平均の速球」に対応できず成績が低迷。ワールドシリーズまで進出したチームにあって、終盤は代打起用が中心だった。

 現在のメジャーリーグは速球の“平均球速”が94マイル、約151キロ前後まで達している。日本球界で一つ大台と言われる球速帯が、最高峰の舞台では標準仕様なのだ。筒香は日本においても150キロ以上のスピードボールに苦戦しているとのデータがあり、残念なことに不安が的中した形となった。

 それでも、1年目は捉えた時の打球速度や選球眼などで優秀な数字を残しており、今季はブレイク候補とも言われていた。しかし2年目も停滞。26試合で打率.167、0本塁打というところで事実上の戦力外となり、一時は日本復帰の噂もあった。そんな中でロサンゼルス・ドジャースに拾われたのだが、12試合で打率.120、0本塁打と結果を残せず、故障もあってマイナー降格。そこから3球団目のパイレーツへ流れ着いたというわけだ。

 いくら球界最弱クラスのパイレーツも、何の見立てなしで筒香を獲得したわけではない。移籍前の3Aでの25試合、筒香は打率.368、6本塁打、出塁率.475、OPS1.159と驚異的な成績をマーク。どこか弱々しさも感じられたスウィングは力強さを取り戻し、ドジャース陣営が「改良できる」と語っていた通り、別人のような選手に生まれ変わった。

【動画】“復活”した筒香が今季3号!苦手のスピードボールを克服した
 パイレーツ移籍後の筒香をデータで見ていくと、しっかりと課題に対処できるようになっている。“その瞬間”は、移籍初打席で訪れた。

 8月16日、パイレーツでの初陣の相手は古巣ドジャース。筒香は9回に代打で登場して通算335セーブ(当時)のケンリー・ジャンセンと対峙した。わずか2球で追い込まれたが4球目、外角95.8マイル(154.2キロ)のシンカーにうまくバットを合わせ、レフト線への完璧な二塁打を放ったのだった。

 先に述べた通り、筒香はメジャーの速球を苦手としていた。昨季は93マイル(150キロ)以上のボールに42打数4安打、打率.095に抑え込まれていたのが、いきなり課題の高速球を捉えたのだ。筒香がこれまでメジャーで長打にできた最高球速のボールは96.8マイルが最速(二塁打)だったが、新天地でいきなり“自己2番目”を記録した。

 そして翌日も、同じくジャンセンから二塁打。8月20日のセントルイス・カーディナルス戦、筒香は今季42試合目にして初アーチを記録し、続く21日も2戦連発。加入後わずか6試合で、レイズとドジャースあわせて打った計4長打に並んだ。さらに23日、今季3号は95.7マイル(約154キロ)の4シームを捉えての一撃。本塁打にしたボールとして、文字通りの“最速球”だった。

 メジャーでの1年半でまったくと言っていいほど対応できなかったスピードボールに、筒香は時間こそかかったがアジャストしつつある。しかも、この日の一発は難しい内角高め。以前なら詰まるか空振りしていたボールに素早く反応し、ホームランという最高の結果につなげた。シーズンは残り1か月ほどしかないが、“進化”した筒香のバッティングは見逃せないだろう。

構成●THE DIGEST編集部
 
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