現地時間８月12日、映画『フィールド・オブ・ドリームス』の舞台となったアイオワ州ダイアーズビルで行なわれたシカゴ・ホワイトソックス対ニューヨーク・ヤンキースの一戦は、スリリングな試合展開もあってパブリシティ的には大成功を収めた。

　この『フィールド・オブ・ドリームス・ゲーム』は来年も開催予定で、今度はシンシナティ・レッズとシカゴ・カブスが対戦するようだ。商魂逞しいMLBが二匹目のドジョウを狙うのは、ある意味当然と言うべきだろう。

　名優ケビン・コスナーが主演したこの映画と、その原作であるＷＰ・キンセラの小説『シューレス・ジョー』は、1919年のホワイトソックス対レッズのワールドシリーズで起こった八百長（「ブラックソックス事件」）によって永久追放となったシューレス・ジョー・ジャクソンの野球界への未練をモチーフにしている。

　2019年にこの映画へのトリビュート企画が発表され、ホワイトソックス対ヤンキースのマッチアップとなることが明らかになった際に、「あれ？　ホワイトソックス対レッズじゃないの？」と筆者は思ったのだが、「最初からシリーズ２の構想があったのだ……」と考えれば、腑に落ちる。
  　かくいう筆者は、この企画にはどちらかと言えば肯定的だ。今のMLBはスポーツと呼ぶにはあまりにビジネスライクで、統計学と高性能電子計測・解析機器に支配（？）されている。「昔のベースボールは人間的なメンタルゲームだったが、今やコンピュータゲームだ」とは、多くのオールドスクール派の元選手やファンが指摘するところだ。

　映画や原作が訴えかけるold ball gameへの郷愁、そして家族愛というテーマは、今のMLBがもう一度振り返るに値すると思っていた。だが、フェイスブックの友人から指摘を受けた。「これを機に永久追放された８人の復権を行なうのかと思ったら、彼らの存在はまったくスルーされて失望した」というのだ。

　映画と原作で主人公を導く天の声、”If you build it, he will come”（それを建てれば、彼はやって来る）の「he」とは、球界を去らねばならなかったシューレス・ジョーのことだ。昨中でも主人公のキンセラが、「彼は1919年のワールドシリーズでは打率.375で、シリーズ唯一の本塁打も放っている。エラーもしていない」と、ジャクソンを擁護するセリフを発している。