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MLB

カーディナルスの英雄モリーナが来季限りで引退。その華々しいキャリアを振り返る<SLUGGER>

宇根夏樹

2021.09.03

攻守にわたる活躍で将来の殿堂入りも有力視されるモリーナ。18年の日米野球でも来日している。(C)Getty Images

攻守にわたる活躍で将来の殿堂入りも有力視されるモリーナ。18年の日米野球でも来日している。(C)Getty Images

 来シーズン、ヤディアー・モリーナ(カーディナルス)は“フェアウェル・ツアー”に出て、各地でファンに別れを告げる。8月24日に1年1000万ドルの延長契約を締結したモリーナは、翌日の会見で「来季が最後のシーズンになる」と宣言した。

 モリーナは捕手王国のプエルトリコ出身。長兄のベンジー、次兄のホゼも捕手だった。2001年に18歳でプロ入りして以来カーディナルスひと筋を貫き、来シーズンがメジャー19年目となる。2年目の05年からずっと正捕手を務め、史上4人目の捕手出場2000試合&2000安打を達成。この記録を1チームで達成したのはモリーナしかいない。球宴選出は10度、ゴールドグラブ受賞は9度を数える。

 モリーナが発揮してきたスキルの中でも、特筆すべきは強肩だ。正確に言うと、捕球から送球までの素早さも含む。通算盗塁阻止率は8月31日時点で40.3%を誇り、05年と07年は50%超え。ここ2シーズンも40%台とまったく衰えを知らない。5月16日のパドレス戦では、ヒザをついたまま二塁へノーバウンド送球して走者を刺した。

 もちろん、キャッチングやリード、配球の組み立てなど、他のスキルも一流。フィールド上の司令塔としてだけでなく、チームリーダーとしてもカーディナルスを牽引してきた。ポストシーズンには計11出場。06年と11年のカーディナルスのワールドシリーズ優勝は、彼がいたからこそ成し得たと言っても過言ではない。また、モリーナは守備だけの選手ではなかった。シーズン打率3割台は5度、20本塁打以上も2度。2000安打に加え、400二塁打にもあと3本に迫る。
 
 長いキャリアの中でいくつも名場面を演出してきたが、06年のメッツとのリーグ優勝決定シリーズ第7戦、最終回の活躍は間違いなくその一つだろう。1対1の同点で迎えた9回表には決勝2ランを放ち、その裏には2死満塁のピンチを招いたアダム・ウェインライトに対し、1ストライクから2球続けてカーブを投げさせ、この年41本塁打を放った強打者カルロス・ベルトランを見逃し三振に仕留めた。MVPにこそ選ばれなかったものの、モリーナはこのシリーズを通じて2本塁打、打率.348。続くワールドシリーズでも打率4割超の活躍で、24年ぶりの世界一に大きく貢献した。

 また、これまでのWBC4大会すべてにプエルトリコ代表として出場。17年の第3回大会では、チーム全員の髪をブロンドに染めさせて結束を高め、シーズンさながらに相手打者を研究して投手をリードした。若きハビア・バイエズ(現メッツ)の名を知らしめることとなった“ノールック・タッチ”も、モリーナの送球がなければ生まれなかった。

 来シーズンは、遠征の行く先々で対戦相手から記念品を贈られる。だが、モリーナが手にしたいのは別のものだ。会見でモリーナはこう言った。「今年も来年も、セントルイスに(ワールドシリーズ優勝の)トロフィーを持ち帰りたい」。最後の花道は、自らの手で飾るつもりでいる。

文●宇根夏樹

【著者プロフィール】
うね・なつき/1968年生まれ。三重県出身。『スラッガー』元編集長。現在はフリーライターとして『スラッガー』やYahoo! 個人ニュースなどに寄稿。著書に『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。
 
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