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検証:大谷翔平はなぜ四球が増えたのか。「アジア人だから」ではない“確かな成長”とリスペクト

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2021.09.24

厳しい攻めが続く大谷。しかし、それは彼が認められた証と言えないだろうか。(C)Getty Images

厳しい攻めが続く大谷。しかし、それは彼が認められた証と言えないだろうか。(C)Getty Images

 現地時間9月23日、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)は本人も驚きの攻め方をされた。初回の第1打席、1球もストライクが入らずストレートのフォアボールとなると、2打席目はファウル1球でまた四球。7回の第4打席は走者二塁を置いた場面で申告敬遠され、延長10回の第5打席は2-0から再び申告敬遠。

 結局、この日は計6打席立ったが2打数無安打で自己最多の4四球、それでいて大谷がバットを振ったのは3回。日本のファンだけでなく、本拠地のファンやメディアからも“四球攻め”にブーイングが巻き起こった。

 大谷は目下、熾烈な本塁打王争いを演じている。6月29日の試合で2打席連発を放ち、ブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)を抜いてメジャー単独トップに立って以降、レースをリードしてきた。しかし、8月以降にペースが鈍くなると、その間にゲレーロJr.、サルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)が猛追し、現在は両者に1本差をつけられて45本でリーグ3位という位置にいる。

 残り10試合。1打席1打席がタイトル争いでも大事になってくることを考えると、先の試合のようにスウィングすらできない逃げの姿勢に対し、嫌悪感を示したくなる気持ちも納得はできる。その中で、「大谷がアジア人だからタイトルを獲らせたくないんだ」と“邪推”する人も散見される。確かに、アメリカにおけるアジア人差別は存在しているが、では大谷も差別の延長で勝負を避けられているのだろうか。

【動画】今シーズン24個目!快足を披露した大谷の盗塁シーンをチェック
 
 まず見解を言えば、結論はノーだと思われる。さらに付け加えると、大谷の四球増加は、少なくともプレーヤーとしてリスペクトされている証と言えるだろう。

 大谷は今季序盤から快音を連発し、4月の段階でゲレーロJr.らと本塁打トップの座を争ってきた。しかしその時、実は課題も見え隠れしていた。4月の四球率はわずか3.1%に過ぎず、出塁率もメジャー平均程度の.320。とにかくガンガン振りまくり、打席アプローチの面では未熟だった(結果ホームランは出ていたけれども)。

 しかし、異変が訪れた。大谷の後ろを打っていたMVP3回を誇る最強打者、マイク・トラウトが5月17日の試合で足を負傷し、長期離脱となったのだ。この時点でトラウトは打率.333、8本塁打、出塁率.466、OPS1.090と圧倒的な成績を残していた。この怪物が大谷の後ろに控えていたからこそ、相手バッテリーも大谷と勝負せざるを得ない状況があった。

 実際、トラウト離脱前(4月1日~5月17日)と離脱後(5月18日~9月22日)のアプローチの変化を見比べると以下のような形になる。

●出塁率:.313→.380
●四球率:4.9%→16.9%
●三振率:29.4%→30.6%

 トラウトがチームを離れて以降、大谷の四球割合は実に3倍以上に増加。そして、5月18日以降の四球率16.9%はメジャー全体3位に位置しており、一つの側面として「勝負を避けられている」のは間違いない。しかし同時に、ボール球スウィング率も35.7%から28.9%まで改善されている。シーズン序盤の何でも振っている打者から、試合を重ねるごとにボールを見極める確かな成長も続けたからこそ、四球数も飛躍的に上昇したのである。
 
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