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プロ野球

二軍球場で聞いた「大谷翔平MVP」の報ーー“偉才”が遠い存在となった今、藤浪晋太郎は何を思うのか?

チャリコ遠藤

2021.12.14

同世代の星として若くして注目を集めた藤浪(右)と大谷(左)。ふたりの間には大きな差が生まれているが、前者は現状をどう捉えている。(C)Getty Images、(C)THE DIGEST

同世代の星として若くして注目を集めた藤浪(右)と大谷(左)。ふたりの間には大きな差が生まれているが、前者は現状をどう捉えている。(C)Getty Images、(C)THE DIGEST

 かつてのライバルがアメリカの野球史に名を刻んだとき、阪神タイガースの藤浪晋太郎は2軍の本拠地である鳴尾浜球場で黙々と走り込みを行なっていた。
【動画】虎党がどよめく162キロ! 藤浪晋太郎の圧巻奪三振シーンをチェック

 大粒の汗を流して引き上げてきた右腕は、「大谷選手について率直な感想を」と投げかけられると小さくうなずいて口を開いた。

「すごいなと思いますし、世界で誰もやってないことをやっているので歴史的な偉業だと思います。投打どちらもトップクラスのパフォーマンスで、そのうえ、両方やるっていう……。年間やるだけでも大変でしょうし、成績残すのは今後、現れるか現れないかの次元じゃないかなと思います」

 11月19日、ロサンゼルス・エンジェルスの大谷翔平が今季のアメリカン・リーグMVPに満票で選出された際に、藤浪が放った祝福の言葉には、とてつもない“距離”を感じざるを得なかった。常に比較されてきたはずの存在が、もう手の届かない、果てしなく遠いところへいってしまったかのように。
 
「大谷翔平」と「藤浪晋太郎」は、ともに球界の未来を担う、いわば「竜虎」だった。規格外のスペックを持つふたりは、高校時代に甲子園で激突し、世間の注目を集めた。12年のセンバツでは、大阪桐蔭のエースとして君臨した藤浪が、大谷にソロ本塁打を打たれながらも花巻東を圧倒。そのまま全国の頂点まで駆け上がった。

 プロ入り後も、同世代のフロントランナーは藤浪だった。新人ながら開幕ローテーションに入り、一足早くプロ初勝利も挙げた。1年目から3年連続で10勝以上をマーク。プロ入り後から二刀流に挑んでいた大谷とは単純比較ができなくなった感はあるが、虎の背番号19は日本球界が誇る逸材として、多大な期待をかけられてきた。

 互いに2年目の14年3月に甲子園で行なわれたオープン戦では、2年ぶりの投げ合いが実現。5回1失点で勝利投手となった大谷は、「去年は歯が立たなかった。藤浪は結果を出している。僕は挑戦する立場」と追いかける立場として発言。ここからも、当時の両者の“差”が窺い知れた。

 だが、競い合うように描いてきた藤浪の成長曲線は緩やかに下降し始める。4年目に7勝11敗という成績に終わると、先発ローテーション争いからもふるい落とされるようになった。「制球難」が負のイメージとして定着し始めた19年には1軍での登板がわずか1試合、キャリア初の未勝利というどん底も味わった。
 
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