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プロ野球

「ハセさん、ありがとう」長谷川勇也がホークスに残した“レガシー”<SLUGGER>

上杉あずさ

2021.12.25

2010年代を代表する打撃職人・長谷川が引退を決断。その研鑽を続ける姿勢は、時に怖さも与えたが、すべてはホークスの成長のためのものだった。写真:THE DIGEST編集部

2010年代を代表する打撃職人・長谷川が引退を決断。その研鑽を続ける姿勢は、時に怖さも与えたが、すべてはホークスの成長のためのものだった。写真:THE DIGEST編集部

 鷹の打撃職人・長谷川勇也は2021年シーズンをもって現役を引退した。10月21日、西武とのホーム最終戦が長谷川の引退試合となった。多くのファンが駆け付け、チームメイトや後輩たちも最後の雄姿を目に焼き付けた。 

 チームはCS進出へ向け、一戦も負けられない緊迫した試合が続いていた。長谷川に用意された最後の打席は0対0で迎えた7回1死二塁、喉から手が出るほど1点が欲しい先制のチャンスでの代打だった。 

 身体がボロボロになって引退する選手がコールされる場面だとは到底思えなかった。長谷川の強い気持ちに、勝利を託した首脳陣からの厚い信頼と敬意さえ感じられた。結果は一塁ゴロに終わったが、文字通り執念のヘッドスライディング。長谷川の消えぬ闘志に、球場全体が胸を熱くした。ベンチで涙するナインの姿が、長谷川の偉大さを物語っていた。 

【動画】気迫のヘッドスライディング! 長谷川の“現役最後”の雄姿を見届けよう!

 
 酒田南高から専修大を経て、2006年の大学・社会人ドラフト5巡目でホークスに入団。13年には打率.341で首位打者、198安打で最多安打の二冠に輝いた。この年の活躍は、長谷川を語る上で必ずスポットが当たる輝かしい軌跡だ。しかし翌年、右足首を負傷。その傷が選手生命に大きな影響を及ぼし、引退するまで長谷川を悩ませることとなってしまった。 

 16年には通算1000本安打を達成し、また一つ偉大な功績を残したが、翌年からは二軍暮らしが長くなり、出場機会は減少。それでも変わらず黙々とバットを振り、自らの技を磨き続けたが、出番の多くが代打の切り札としての難しい場面。その一打にかける思い、打席に向かう心境を、長谷川は「崖から飛び降りるような気持ち」と表現したこともあった。 

 他を寄せ付けぬオーラをまとい、集中力を研ぎ澄ます姿はまさに侍のよう。右足首の状態も不安定だったが、長谷川は問題ないことをアピールするかのように積極的な走塁、力強いスライディングを見せる場面も目立った。まさに気持ちで、打ち、走り、守っていた。 

 18年オフの契約更改では、「若い選手に負けるとはさらさら思ってない」「意識の高い(若手)選手がいない」と、二軍でともに過ごす時間が増えた若手に苦言を呈していた。球界の世代交代の流れを感じつつも、それに劣らぬ確かな努力と技術がそこにはあった。それでも、年々ベテランのチャンスは減っていく……。歯がゆさを感じていたはずだ。 
 
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