プロ野球

「プロ野球は難しいな」――大不振で漏れた“偽らざる本音”。新人の肩書きが外れる佐藤輝明に首脳陣が期待するもの

阪井日向

2022.01.11

待望のルーキーイヤーは、山あり谷ありだった。シーズン後半戦に極度のスランプに陥った佐藤は、何を考えていたのか。写真:産経新聞社

 猛虎の、そして球界の未来を担う男の2年目が幕を開けた。阪神の佐藤輝明は、年明けから母校・近畿大学の生駒グラウンドで練習を開始。4球団が競合したドラフト1位にまで成長を遂げた原点の地で、2022年シーズンを始動させた。
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「初心を思い出して、1年間これから頑張っていきたいと思います。もちろん日本一はチームとして目指していくところですし、個人としても全部去年以上を上回る成績を残したいと思います」

 振り返ればまさに紆余曲折、山あり谷ありのルーキーイヤーだった。

 春季キャンプから持ち味の長打力をいかんなく発揮し、その勢いを保って迎えたオープン戦では12球団最多の6本塁打を記録。見事に開幕スタメンを掴むと、2戦目にはヤクルトの田口麗斗からプロ初安打となるバックスクリーンへの1号本塁打を放った。ドラフト制以降の球団新人では1969年の田淵幸一らのチーム3試合目を抜く史上最速アーチは、阪神ファンのみならず、プロ野球ファンの度肝を抜いた。

 その後も横浜スタジアムでの場外弾や4番初出場試合での満塁弾、メットライフドームでの1試合3発など規格外の一発など着実に本数を重ね、前半戦だけで20本塁打をマーク。地元・西宮から彗星のごとく現れた背番号8に導かれるように、チームも首位を快走した。
 

 だが、後半戦は一転して大きなプロの壁に直面した。

 8月21日の中日戦の第4打席目に放ったセンター前ヒットを最後にHランプから遠ざかり、プロ野球野手ワースト記録に並ぶ59打席連続無安打を記録。「打てないところをどんどん攻めてくる。対応に苦しんだ感じはありましたね」と執拗な内角高めの直球と低めの変化球攻めの対応に苦しみ、一度崩れたフォームをなかなか修正できないまま長く険しいトンネルをさまよった。

 さらにシーズン終盤は左膝痛を背負いながらプレーをした佐藤に限らず、主力打者の相次ぐ打撃不振に苦しんだチームは、結果的にわずか5厘差でヤクルトに王者の座を譲った。

 不振に喘いだ後半戦はベンチスタートの試合も増えた。悩める大器の起用法については、評論家や球団OB、そしてファンたちの間で議論がメディアやネット上を通して広がった。スタメンか、代打出場か、2軍調整か――。矢野燿大監督もシーズン終了後に「(起用法は)やっぱり悩みましたね。テルを見たくて甲子園に来てくれたりテレビを見てくれている人もいる。何が1番チームのため、テルのためになるのかなと考えながら決断したつもりですけど。1人だけのことでもダメですし、全体のことも考えていかないとダメなんで」と当時の悩める胸中を明かしていた。
 
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苦しみぬいて改めて身に染みた思い