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MLB

大学通算1登板、右ヒジ手術。日本プロ野球が見送った“独立リーガー”松田康甫はなぜドジャースと契約できたのか

中島大輔

2022.01.18

劇的な形でドジャース入りした松田。その数奇なキャリアと奇跡の歩みを振り返る。写真:中島大輔

劇的な形でドジャース入りした松田。その数奇なキャリアと奇跡の歩みを振り返る。写真:中島大輔

 独立リーグの茨城アストロプラネッツから、MLBの名門ロサンゼルス・ドジャースへ――。1月17日に発表された松田康甫の移籍は、誰も想像できない文字通りの“電撃発表”だった。その驚きは、本人の第一印象に凝縮されている。

「この人、何を言っているのかな?」

 2021年6月、茨城球団の色川冬馬GMからドジャースが興味を持っていると電話で伝えられた時、松田は率直にそう感じたと振り返る。

 無理もない。拓殖大時代は1年冬に右肩の手術を受け、公式戦で投げたのは4年時の1試合のみ。トライアウトを経て入団したBCリーグでも3試合しか投げておらず、7月にはトミー・ジョン手術を控えていたからだ。

「ドジャースの話を最初に聞いた時も、入団が決まった今も、まだ実感がありません」

 そう話した松田が右肩の手術から復帰したのは大学4年の頃だった。最終学年の春、周囲が就職活動を行うのを見て、自分もしなければと感じた。そうして母校で教育実習を行う一方、子どもの頃から抱いてきた夢が沸々と蘇ってきた。「世界一の野球選手」だ。

【動画】独立リーグからメジャーへ! “シンデラ”・松田康甫の投球がこれだ!
「自分は身長がデカイし、パワーも負けていない。このままやめたらもったいない」

 一念発起してBCリーグのトライアウトを受験すると、色川GMの目にとまった。2021年シーズン途中、セサル・バルガスをオリックス、ダリエル・アルバレスをソフトバンクに送り出すなど独自の移籍戦略を持つ色川氏は、193センチ、86キロ(当時、現在は95キロ)というサイズを含め、松田に「メジャーリーグポテンシャル」を感じた。そして11月、同リーグのドラフト1位で指名する。

「投げるな。投げるな」。茨城に入団すると、以前とはまるで異なる言葉を首脳陣にかけられた。日本では一定以上の球数を投げることで投手は成長すると考えられ、松田自身もそう信じて取り組んできた。拓殖大時代はほぼ毎日ブルペンに入り、60球程度投げていたという。

 対して、茨城の指導法はまるで違った。投手コーチ兼ストレングスコーチの小山田拓夢は自身も早稲田大や武蔵ヒートベアーズでプレー経験があり、日本有数のトレーナーとしてオンラインサロン「NEOREBASE」ではダルビッシュ有(パドレス)や千賀滉大(ソフトバンク)らに知識を共有している。松田にはブルペン入りを週1回程度にさせる一方、トレーニングを行なわせた。

 当初、松田はこの方法に違和感を覚えたという。

「僕はNPBに行けなかったら、1年で野球をやめようと思っていました。それで練習後に残って投げていたら、本当に怒られたんです。でも、自分の中では猶予が1年しかないし、投げないとうまくならないと思っていたので……」

【動画】独立リーグからメジャーへ! “シンデラ”・松田康甫の投球がこれだ!
 
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