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事前調査と10%以上の差。ボンズとクレメンスの殿堂入り落選に見え隠れする記者たちの“建前”と“本音”<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.01.26

ボンズ(左)のMVP7度は史上最多、クレメンス(右)のサイ・ヤング賞受賞7度も同じ史上最多だが、殿堂入りは果たせなかった。(C)Getty Images

ボンズ(左)のMVP7度は史上最多、クレメンス(右)のサイ・ヤング賞受賞7度も同じ史上最多だが、殿堂入りは果たせなかった。(C)Getty Images

 現地1月25日、全米野球記者協会(BBWAA)による殿堂入り投票結果が発表された。通算541本塁打を放った“ビッグ・パピ”ことデビッド・オティーズは有資格1年目で殿堂入りを決めたのに対し、史上最多7度のMVPを誇るバリー・ボンズ、同じく史上最多7度のサイ・ヤング賞を受賞したロジャー・クレメンスは揃って得票率75%に届かず、“落選”となった。2人とも、現役晩年の薬物疑惑が最後まで響いた形だ。

 アメリカでは近年、投票資格を持つ記者が結果発表前に自らの投票内容を公表することが通例となっている。各記者がSNSなどで明かした投票を集計するサイトもあり、選挙前の世論調査と同じように、投票結果を予想する上でも一定の指針となっている。

 興味深いのは、各記者が公表した投票内容と、実際の結果に乖離が見られることだ。

 ボンズは事前の集計結果では得票率77.6%、クレメンスは76.1%だった。この通りの結果だったら、2人はギリギリで殿堂入りを果たしていたことになるが、実際の得票率はそれぞれ66.0%、65.2%で事前投票結果から10%以上も低かった。
 周知のように、ボンズとクレメンスの殿堂入りの是非をめぐってはこの10年間ずっと激しい議論が戦わされてきた。

「反対派」は、不正によって打ち立てられた記録は無意味であり、“汚れた英雄”の2人をわざわざ野球殿堂に祀るべきではないと主張。一方、「賛成派」は、2人がステロイドを使用したとされる時期はMLBによる薬物検査が行われていなかった(つまりルール違反は犯していない)こと、薬物使用を始めたとされる時点ですでに殿堂入りに値する成績を残していたこと、ステロイド以外も含め不正に手を染めた選手がすでに何人も殿堂入りしていることを指摘した。

 冷静に議論の中身だけを評価すれば、「理」があるのは賛成派ではないかと僕は思うし、自分にもし投票権があったら、迷わずボンズとクレメンスに投票している。実際、『ジ・アスレティック』のピーター・ギャモンズやケン・ローゼンタール、『ESPN』のジェフ・パッサンなど有力記者の多くも同じ主張をずっと繰り返してきた。

 にもかかわらず、実際の投票結果では、ボンズとクレメンスは最後まで「ノー」を突きつけられた。

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