いつも以上に深々と頭を下げる近江・多賀章仁監督の姿がとても印象的だった。
校歌を歌い終えた後のアルプススタンドに挨拶をしたときの一幕だ。
おおよそのチームは敗れた時に、それまでの応援に感謝を込めて挨拶するものだが、この日の近江は勝者でありながら、この場にいることの重大さを感じているかのようだった。
「昨年の夏は(コロナで大会が無くなった)前年の3年生の気持ちを力にしてベスト4まで勝ち上がることができた。今大会は京都国際さんの無念の思いをしっかり背負って、野球が当たり前にできることじゃないんだと。こうして甲子園という球場で試合ができることに感謝して、今日はやろうと選手たちにハッパをかけた。そういう意味では、京都国際さんの思いをしっかり持って戦ってくれたかなと。それが私としては嬉しい」
多賀監督はそう話している。
大会直前に出場校が差し代わったのは開幕2日前のことだった。昨秋の近畿大会でベスト4に進出し出場が決まっていた京都国際がチーム内のコロナ蔓延により出場辞退、代わって、近畿地区の補欠1位校だった近江が繰り上がりとなった。
その初戦で、近江が長崎日大に6−2で勝利。見事に1回戦突破を果たしたのだった。
「出場辞退をされた京都国際の選手の気持ちを思うといたたまれない気持ちになりました。ただ、チャンスをいただいたので、全力でやろうと思いました」
選手たちは口々にそう話したが、それほど今大会には今までとは異なった想いがあったのだろう。
もっとも、試合は苦しい展開だった。
昨秋は肘痛の影響で登板することができなかったエースで4番・主将も務める山田陽翔が先発。変化球を多投するピッチングは力投派の山田からすれば、本来の姿にはあまり見えなかった。
6回裏、山田は2死二塁のピンチを招くと、連続長打を浴びて2失点。粘りきれなかった。攻撃陣も1、2番がなかなかチャンスメークできず、打線は分断。0−2のビハインドのまま、敗色濃厚の様相を呈していたのだった。
ところが9回、近江が粘りを見せる。
先頭の3番・津田基が右翼二塁打で出塁、続く4番の山田が死球を受けて1、2塁とすると、5番の岡崎幸聖が右翼前適時打で1点を返した。6番・川元ひなたの左翼飛球で三塁走者の山田が本塁で憤死。ダブルプレーとなって万事休すかと思われたが、2死・1、2塁から8番・大橋大翔が右翼前に落として同点としたのだった。
土壇場での同点劇にチームは一丸となった。
延長に入ってからエンジンの回転数を上げたエースの山田がピンチを背負いながらも無失点で切り抜けた。怪我明け初の公式戦登板と思えぬほどの気合のこもった投球を見せて、延長13回タイブレークに持ち込んだのである。
校歌を歌い終えた後のアルプススタンドに挨拶をしたときの一幕だ。
おおよそのチームは敗れた時に、それまでの応援に感謝を込めて挨拶するものだが、この日の近江は勝者でありながら、この場にいることの重大さを感じているかのようだった。
「昨年の夏は(コロナで大会が無くなった)前年の3年生の気持ちを力にしてベスト4まで勝ち上がることができた。今大会は京都国際さんの無念の思いをしっかり背負って、野球が当たり前にできることじゃないんだと。こうして甲子園という球場で試合ができることに感謝して、今日はやろうと選手たちにハッパをかけた。そういう意味では、京都国際さんの思いをしっかり持って戦ってくれたかなと。それが私としては嬉しい」
多賀監督はそう話している。
大会直前に出場校が差し代わったのは開幕2日前のことだった。昨秋の近畿大会でベスト4に進出し出場が決まっていた京都国際がチーム内のコロナ蔓延により出場辞退、代わって、近畿地区の補欠1位校だった近江が繰り上がりとなった。
その初戦で、近江が長崎日大に6−2で勝利。見事に1回戦突破を果たしたのだった。
「出場辞退をされた京都国際の選手の気持ちを思うといたたまれない気持ちになりました。ただ、チャンスをいただいたので、全力でやろうと思いました」
選手たちは口々にそう話したが、それほど今大会には今までとは異なった想いがあったのだろう。
もっとも、試合は苦しい展開だった。
昨秋は肘痛の影響で登板することができなかったエースで4番・主将も務める山田陽翔が先発。変化球を多投するピッチングは力投派の山田からすれば、本来の姿にはあまり見えなかった。
6回裏、山田は2死二塁のピンチを招くと、連続長打を浴びて2失点。粘りきれなかった。攻撃陣も1、2番がなかなかチャンスメークできず、打線は分断。0−2のビハインドのまま、敗色濃厚の様相を呈していたのだった。
ところが9回、近江が粘りを見せる。
先頭の3番・津田基が右翼二塁打で出塁、続く4番の山田が死球を受けて1、2塁とすると、5番の岡崎幸聖が右翼前適時打で1点を返した。6番・川元ひなたの左翼飛球で三塁走者の山田が本塁で憤死。ダブルプレーとなって万事休すかと思われたが、2死・1、2塁から8番・大橋大翔が右翼前に落として同点としたのだった。
土壇場での同点劇にチームは一丸となった。
延長に入ってからエンジンの回転数を上げたエースの山田がピンチを背負いながらも無失点で切り抜けた。怪我明け初の公式戦登板と思えぬほどの気合のこもった投球を見せて、延長13回タイブレークに持ち込んだのである。