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高校野球

投手起用で決断しなかった近江と、決断した浦和学院――。今日の勝敗だけで「成否」を決着する必要はない

氏原英明

2022.03.30

激痛こらえながら11回を投げ抜いた近江エース・山田。これで4試合の連続完投勝利だ。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

激痛こらえながら11回を投げ抜いた近江エース・山田。これで4試合の連続完投勝利だ。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 もはや、今すぐ答えの出る議論ではない。

 どっちを信じたいかにすぎない。

 代替出場の近江高校が決勝進出を果たした。まさかの出場からの快進撃に驚いている人は少なくないだろう。

 この日はエース・山田陽翔が延長11回を一人で投げ抜く完投勝利。球数は170球まで達していた。今大会、唯一の4試合連続完投勝利だ。しかも、今日は5回裏に死球を受けて悶絶。全力疾走をほとんどできないほど足の痛みがある中での好投だった。

「何回も山田には感動させられて、ベンチで涙が止まらなかった。球数もいってましたし、このまま投げさせていいのか。僕が決断せんといかんという気持ちと山田が気迫の投球で攻めていたので、凄いよなと」

 近江・多賀章仁監督はそう絞り出した。

 選手が限界を超えているのは分かっている。しかし、目前の勝利と気迫を前面に打ち出している教え子の前に、何もできなかったというのが本音だろう。

 この日の山田がそうであるように、高校球児は時として、とてつもない力を発揮することがある。

 限界に達しているであろう状態でも、歯を食いしばって腕を振り、好投を見せるのだ。

 1986年、天理高校のエース・本橋雅央は1球1球、投げるたびにしかめっ面を見せた。大会前に痛めた肘が限界に達していたのだが、それでも同年夏の決勝は完投勝利。県勢初の優勝に導いた右腕だった。

 91年夏の決勝で惜しくも準優勝に敗れた沖縄水産の大野倫は疲労骨折を隠しながら、決勝戦までを投げ抜いた。沖縄県勢の初制覇が掛かっていたから泣き言は言えなかった。

 98年の松坂大輔は準々決勝で250球完投勝利。4連投目となった決勝戦ではノーヒットノーランを達成。2006年の斎藤佑樹、10年の沖縄県勢初の春夏連覇を果たした時のエース・島袋洋奨、18年の吉田輝星など、かつての高校球児たちはどんな苦行にも、泣き言を言わず、途轍もない精神力を発揮して好投を見せたのだった。

 いわば、山田のこの日の好投は甲子園の舞台でよく見る光景の一つだった。

 だが、その意見が分かれ始めているのは紛れもない事実だった。そのうちの一つの例が、この日の対戦相手、浦和学院が採った投手の起用法だ。

「彼の気迫には野球人の一人として感動しました」

 そう語った浦和学院の森大監督はこの日、3試合に先発したエースの宮城誇南を登板させなかった。
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