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「スズキはメジャー全体でも上位に入る強打者だ」カブスの事前分析を遥かに超える適応力を見せた鈴木誠也の開幕1か月【現地発】<SLUGGER>

ゴードン・ウィッテンマイヤー

2022.04.30

これ以上望めないほど最高のスタートを切った鈴木。チームにもすっかり溶け込んでいる。(C)Getty Images

 今年3月、カブスのジェド・ホイヤー編成総責任者は、鈴木誠也がNPBからMLBへの適応するための期間が必要であるとの見通しを示していた。

 日本球界で首位打者に輝いたスラッガーとカブスが契約を交わしてからちょうど1か月後、鈴木はメジャーリーグで過ごした最初の1週間で、ナ・リーグの週間MVPに選ばれた。

 それを受け、ホイヤー編成総責任者はある地元記者にこう聞かれた。「あなたがこれ以上派手に間違うことはあり得るのか?」

 ホイヤー社長はこう答えた。「もしかしたら、これが適応期間なのかもしれないよ」

 それが事実なら、カブスが投じた8500万ドルは、これまでの大型補強史の中で最も価値が高いものとなるだろう。

 開幕最初の1週間で「適応」した結果、鈴木は長打率(.960)だけでMVPを獲得した直近13人のうち12人のOPSを上回り、マイク・トラウト(エンジェルス/.972)とほぼ同等の数字だった。
「これだけ素早くアメリカに慣れたことに、おそらくみんなが驚いているはずだ。それでも、彼にとっては普通のことなんだろう」と打撃コーチのグレッグ・ブラウンは言う。

「彼は、我々の評価の過程でメジャーリーグでも上位に入る打者と感じていた選手だ。そう判断するだけのデータもあった」

 ブラウンは一級品の選球眼と優れたハードヒット率についても語った。「まず打者として優れていて、そこにパワーが加わっているんだ」

 ブラウンによれば、鈴木との対話は、相手投手のスカウティング・レポートの分析以外は指導というより関係構築に重点を置いているという。

「彼がどんな人間で、どんなことを考えているのかを理解しようとしているところだ」と言うブラウンは「通訳を使って話すことが多いけど、コミュニケーションがとても上手だね。自分の身体や動きのことをよく理解している。改善すべき分野について語り合うこともあるし、それはすごく役に立っているよ。スタッフ全員で彼のやりやすい環境を作り上げることができている」とも話す。
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